選択の痕跡

音楽・テクノロジー・哲学

2022 Best Books

2022年に読んだ本(≠発売した本)の中で、特に面白かった10冊を選んでみました。(順位ではないですが、流れはあります。)
あまり意識はしていないのですが、自分の読書の傾向が良く出ているなとは思います。最近は黒鳥社周りにお世話になることが多いですね。

ファンダムエコノミー入門 BTSから、クリエイターエコノミー、メタバースまで / コクヨ野外学習センター(編集)

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2022年一番面白かった本はこの本。
音楽の世界では、良きにしろ悪しきにしろファンダムの存在感が日に日に増していく中で、その概念を拡張し、エコノミーとして社会に通底する考え方として捉える視点が斬新だったし、その視点から集められた古今東西の論考の数々はどれも面白かった。

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ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち/ レジー(著/文)

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社会に感じている違和感を的確に整理し表現してくれた。
かつ、ファスト教養が悪であると断罪するいう描き方では全くなく、距離感を測りながら付き合っていかなければいけないということ。
そしてファスト教養を解毒するための一つの提案として、ノイズと偶然の重要性の視点からのリベラルアーツとしての雑談という考え方。
決して歯切れが良い"わかりやすい"内容ではないが、だからこその深みと射程の広さがある。

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shueisha.online

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映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形/ 稲田豊史(著/文)

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ファスト教養にも繋がるファスト映画を起点に、社会に起こりつつあるコンテンツとの向き合い方の変化を捉えた本。
若干書き方に偏りを感じつつも、実際に社会に起きている事実としてはそうなんだろうなと考えさせられる内容。

honz.jp

mercuredesarts.com

スマホ時代の哲学 失われた孤独をめぐる冒険 / 谷川 嘉浩 (著)

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ファスト教養やファスト映画の話を、また違った視点から考え、一つの在り方として提示したのがこの本であると思っている。
我々が暇さえあればスマホを触ってしまうのはなぜか。それの何が問題で、どうすれば良いのか。
柔らかな書き口ながら、縦横無尽に話題が展開していくのは非常に面白かったし、社会の芯を食う内容であると思う。
ちなみに、この書籍のきっかけは、株式会社インフォマートのウェブメディア「Less is More.」で受けたインタビューとのことだが、このウェブメディア、毎回斬新な視点と内容を取り扱っているので、非常に面白く、おススメ。

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note-infomart.jp

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予測不能の時代 データが明かす新たな生き方、企業、そして幸せ / 矢野 和男(著/文)

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前著「データの見えざる手」にはデータの執念に衝撃を受けたわけだが、この本では、ビジネスではなぜか予測が出来る前提で物事が組み立てられているが、もはや「予測不能」なのだという前提から話がスタートしているのが、とても良い。本当にそうだと思う。

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民主主義のつくり方 / 宇野 重規(本文)

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プラグマティズムについて学ぶならこの本と聴いて読んでみた。
自分ののプラグマティズムの理解が非常に浅いことが理解できたし、デジタルの文脈でのアジャイルというのは、まさいしくプラグマティズムなんじゃんと気付けたのが、自分としては大収穫だった。

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編集の提案 / 津野海太郎(著/文), 宮田文久(編集)

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自分は特にここ数年、広義の意味での「編集」に興味がある。
その意味で「編集」をいわゆる雑誌編集などの枠に閉じ込めずに、広く語っているのがとても良かった。
関連で開催された音筆の会も、どの回もとても面白かった。最後に辿り着いた場所が「編集というのは、"夜中のコンビニでお菓子と飲み物のバランスを考えること"と同義なのだ」というのも最高だった。

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音筆の会:番外『編集の提案』の変|第1講「テープ起こし再び」 | Peatix

トーフビーツの難聴日記 / tofubeats(著/文)

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アーティストやミュージシャンの生活がどういうものなのか、自分は全然知らなかったなと思い知る内容であった。
音楽業界の良いところ・グロいところ、そこでの日々を通して見る社会が、日記というごく私的な文章であるからこそ、臨場感あるものとして描かれているのが、とても良いと思った。
そういえば、tofubeatsも「編集」について書いていた。やっぱり重要なのはここな気がする。

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わたしはラップをやることに決めた フィメールラッパー批評原論 / つやちゃん(著/文)

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今最も刺激的で面白い文章を書くのは、つやちゃんだという見方が、さらに強固になった2022年であったかと思うが、年始に発刊された著書に込められたエネルギーは、やはり凄まじいものだった。感想はnoteに書いたのでそちらで。
この1年を通して、活躍の幅も広がりつつあり、2023年はどんな文章(創作)を読ませてくれるのか、楽しみだ。

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同志少女よ、敵を撃て / 逢坂 冬馬(著/文)

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2022年はあまり小説は読まなかった気がするのだが、ウクライナとロシアの話も勃発した年において、それが主題ではないとはいえ、この小説は読まざるを得なかった。
戦争に巻き込まれる人達の人生がどういうものであるのか、それが丁寧に描かれている。

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