選択の痕跡

音楽・テクノロジー・哲学

2024.4 Monthly Best Songs

2024年4月に聴いて良かった音楽のまとめです。
この月は、良い曲多すぎでだいぶ絞っちゃいました。

  • Songs

tofubeats「I CAN FEEL IT - Single Mix」

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tofubeatsの新作EP「NOBODY」より。
今作は、全曲のボーカルをAI歌声合成ソフト・Synthesizer Vで制作したことで話題となっているが、インタビューを読む限りは、少なくともそこに対して殊更に意味を持たせているというわけではなさそうだ。
自分も思い出した西野七瀬バージョンの「ふめつのこころ」のような空気感。その上で、いい意味での軽薄さ。適当に流してくれればというトーフの言葉が非常に印象的で、かつピッタリだなと思う。トーフのこういうところが好きだ。今の時代に必要なユーモアが、ここにはある。

そういえば、若林恵との「発注向上委員会」立ち上げのトークイベントでも、トーフの「こういうところ」が出ていた気がする。
なんていうか、熱いんだけど冷めてるし、その出力の仕方が独特で、ビジネス的にも見えるしカルチャー的にも見える。本当に面白い人だ。

natalie.mu

note.com

Peterparker69「@location」

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JeterとY ohtrixpointneverによるユニットの新曲。
これまであまりPeterparker69にはあまりハマってなかったんだが、直近2曲はかなり好きだ。
これまでの曲には、浮遊感強めの印象を受けていて、その幻想的な空間の中を踊る雰囲気が、興味深いとともに、自分にはハマりきらなかったのだが、最近は音が随分と強くなったように感じる。"身体"に、"腰"に響く。
クラブで聴いたら、そりゃ気持ちいいだろうなぁ。

a子「LAZY」

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シンガーソングライターのニューシングル。随分と音が面白いし、良いなと思った。
ギターのリフの音色が都度都度印象的だし、イヤホンで聴いていると特に、音が広く鳴っているなと感じる。
特別ギミックはないように思うが、シンプルなバンドサウンドが軸にして、その弄り方が面白いのかな。

ドミコ「Oh Dive!!」

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ドミコの新作EP「異(下)」より。このEPは、セレクトした楽曲を最新のアレンジで楽器からボーカルまで全て再録・MIX・Masteringまで完全に再構築されたものだそうだ。
再録作品だということに気づかない程度のファンではあるが、ドミコはやっぱりカッコ良い。先日ライブをみたが、思った以上に尖っていて、最高だった。
この曲は、ギターの音像と電子音の組み合わせ方が面白く、印象的だった。ぐちゃぐちゃになる電子音の中でも、貫いてまっすぐ届くバンドの音とボーカルに、あぁこれがドミコだなと思う。

BREIMEN「寿限無

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5人組バンドのメジャー1stアルバム「AVEANTIN」より。チェックできていなかったのだが、APPLE VINEGAR -Music+Talk-のゲスト回を聴いたら、いろいろ面白かったし、腑に落ちた。
BREIMENはなんか面白いことやってるバンドぐらいに思っていたが、"ファンク"という軸が強く出ているのが今作というのはなるほどなと思ったし、彼らの音からはケレン味を感じていて、"ダサさ"(多分ポッドキャスト終盤に話してる"ダサさ"とはちょっと違う)と"かっこよさ"を揺れ動くヒリヒリ感に魅力を感じる。
この曲なんて、当人が歌詞の印税もらっていいのかなというほど、落語の「寿限無」をそのまま使っているので、ほぼオリジナリティはないわけだが、まさにそういう"危うい"ところが、このバンドのかっこよさに繋がっているのだろう。

open.spotify.com

saccharin「まぐれ幸い」

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She Her Her Hers のメンバーであり、TENDRE、LUCKY TAPES、The fin.、Michael Kaneko、 奇妙礼太郎、小原綾斗とフランチャイズオーナーなどのサポートなどを行うドラマー・松浦大樹が歌うプロジェクト・saccharinによる新曲。
先日観た、SYNCHRONICITY'24が本当に素晴らしかった。こんなライブありなのかというほど、規格外で凄まじかった。
正直いえば、別に曲がめちゃくちゃ好きかといえば、そういうわけでもない。ただ、あのライブを一度体験してしまえば、このプロジェクトを追わないわけにはいかないし、この歌も音も癖になる。
そういう、音楽の不思議な魅力を体現しているのが、saccharinだ。

note.com

宇多田ヒカル「Electricity」

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宇多田ヒカルの新曲には、もれなくやられた。
最近の曲の流れを汲んだ形で、全編通して本当に心地が良く、耳障りが良いスムーズな音が鳴っているトラックだなと思うが、やはり言葉の使い方やはめ方がところどころ歪だ。少しずらしてくるのが違和感でもあり、心地よさにもつながる。
そして、極め付けは、フックの音のはめ方。とにかくそれに尽きる。音楽にはまだまだ可能性があるのか、と思わせる。

www.billboard-japan.com

note.com

Furui Riho,knoak 「Your Love」

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シンガーソングライターがリリースしたニューアルバム『Love One Another』より。多数のタッグを組むknoakと共に作り上げた1曲。
ルーツでもあるR&B・ゴスペルをベースにしたとのことで、ボーカルもトラックも抜群なグルーヴで、これしかないじゃん的な感覚になる。
イントロの大胆な展開にも、にやりとさせられた。こういう細かなギミックができるのも、曲の強さがしっかりしているからだろう。強靭なポップスだなと思う。

claire rousay「head」

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近年のアンビエントにおける注目株の新作「sentiment」より。
前に一度聴いたようでお気に入りに入っていたのだが、明確に意識したのは、APPLE VINEGAR -Music+Talk-の後藤正文名義のドローン・アンビエント作品『Recent Report Ⅰ』の回にて、冒頭につやちゃんがこの作品について語っていた時から。
改めて聴いてみると、抑制の効いた緊張感と余剰が共存したようなトラックの上を、オートチューンのかかったボーカルがエモーショナルに綱渡りしていくような楽曲で、グッときた。“Emo Ambient”というワードがしっくりくる。
自然も都会も、今も昔も、ぼんやりと見えるようなアンビエントサウンドだ。
こういうオートチューンの使い方、本当に好きなんだよなぁ。終始込み上げてくるものがある。

turntokyo.com

lyrical school「Ultimate Anthem」

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8人組ヒップホップグループによる、新体制初のフルアルバム「DAY 2」より。
AL全体的に興味深い音が鳴っていたが、明らかに異質なこの曲が強く印象に残った。信頼のKMプロデュース、Lil’ Leise But Goldコンポーズにより楽曲だ。
タイトルのぶちかまし感を裏切らず、冒頭からダーティーに飛び込んでいく展開に、心を掴まれた。
強い音を打つトラックに対して、8人がばっちり答えてラップしている。新体制1年ちょっとでここまで来れたのはすごいだろう。

蛇足。今のリリスクを表す言い方で最もしっくりくるのが「仲良し8人組ヒップホップユニット」とのことで、確かにそういう雰囲気は感じるが、良くも悪くもあまりにファジーだ。アルバム通しても良い曲は多いのだが、そこに貫くものを何か感じ取るのは難しかった。
もちろんそれは、それだけ面白さに溢れていると見ることもできるので、あとはどのようにプレゼンスしていけるか、か。

natalie.mu

mikiki.tokyo.jp

valknee「Watch me!」

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lyrical schoolの新作にも楽曲提供している日本の女性ラッパーによる新作、1stフルAL「Ordinay」より。てか1stだったのか。
あまりちゃんと聴いてきたわけではないが、アルバム全体通して以前よりもhyperpopの影響を強く感じる仕上がりだ。
ボーカルにも強くかかったエフェクトが、記名性があるvalkneeの声を、別の何かに昇華させているように感じることもあり、興味深いと感じた。
この楽曲も、作曲にhirihiriが入っていることもあり、過剰感がある、非常に"らしさ"を感じさせる。つやちゃんいわく「valknee の音楽性は、あるときを境に変化した。私はそれを hirihiri 以前/以後と呼んでいる」とのことで、なるほどと思わせる。(このALでは3曲参加しているようだ
とりわけ、ジャージクラブの軽快なビートに乗せて、チープに鳴るシンセのリフが強く耳に残る。

www.ele-king.net

東京電脳, 電音部 & hirihiri「invisible (feat. lilbesh ramko, ねねるねる (CV:苺りなはむ), 叶ヒカリ (CV:ぁぃぁぃ), 八波零音 (CV:yAmmy) & 苺りなはむ)」

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背景情報を抑えられていないのだが、ダンスミュージックを主題とした、バンダイナムコエンターテインメントによるキャラクタープロジェクト「電音部」の中のユニット「東京電脳」に、hirihiriとlilbesh ramkoが楽曲提供したようだ。
hirihiriは↑の通り楽曲提供でよく名前をみるし、lilbesh ramkoは「関ジャム 完全燃SHOW プロが選ぶ年間マイベスト10曲 2023」でも選出されていたり(hirihiriもPAS TASTA名義では選出されている)、APPLE VINEGAR -Music+Talk-でも言及されていたりするしで、この2人が今のシーンに与えている影響は、相当あるのではないか。
この確かな記名性のある過剰さと割れた音には、いつも身体も心もぶん回されるほどの引力がある。

Silica Gel, So!YoON!「Tik Tak Tok (feat. So!YoON!)」

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来日公演かつbetcover!!のゲスト出演が発表されて盛り上がっている、韓国の4人組インディーロックバンド、Silica Gel
全然知らなかったのだが、せっかくなので軽く聴いてみた中で、新曲ではないものの、この曲には驚いた。
Se So Neonのギターボーカルとしてフロントを務めるファン・ソユンのソロプロジェクト、So!YoON!とのフィーチャリング楽曲だが、この曲、半分以上がギターソロだ。
最初聴いた時は、随分と長いギターソロでかっけぇなぁと思ったら、全然曲に戻らないし、いつまでもギターソロやっているし、想像していた3倍以上長くて、そのまま最後まで行ってしまうという展開に、本当にびっくりした。この曲のボーカルはあくまでプロローグに過ぎず、ギターソロのためにある曲であった。
こんなことやっちゃうバンドはかっこいいに決まっているな。

余談だが、それにしても、ちょっと検索したぐらいじゃ全然曲に関する情報が出てこなくて、しんどいな、、、
MV見る限り、So!YoON!はボーカルでちょっと入ってるだけなのかな。

Bialystocks「近頃」

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なんか、エンドロール感ある楽曲だなと思って、最後に持ってきた。
あっという間に、Bialystocksの纏う風格と貫禄がとんでもないものになっている。出す曲全部が芯を喰っていて、日本のポップスを背負ってる。
そう書いてふと思ったが、どこか不思議な言葉遣いは、遠くで宇多田ヒカルとも繋がっているように感じる。

そしてどうせみんなそんな困難/誰も考えてない/友情無常空想にグッバイ/全然まだ