選択の痕跡

音楽・テクノロジー・哲学

2021 Best Books

2021年に読んだ本の中で、特に面白かった10冊と漫画2作品を選んでみました。テーマというかモチーフというかは、かなり通底している何かがあると思っています。



くらしのアナキズム / 松村圭一郎(著/文)

www.hanmoto.com

2021年のベスト。2021年はアナキズムについて、触れることが多かった。その中でもここで語られている、生活の場に根差す苦しさを、生活者自らの手で改善していくことの重要性は、これからより深く考えていく必要があると思っている。
極端のどちらにも触れず、そのあいだを抜いていくしかない。

他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ / ブレイディ みかこ(著/文)

www.hanmoto.com

アナキズムについて初めて触れたのはこの本だったと思う。タイトルから感じる柔らかな印象を良い意味で裏切られた。相当な深さでエンパシーの議論をもとに、そこから生きることについて、考えることが出来る。

手の倫理 / 伊藤 亜紗(著/文)

www.hanmoto.com

今最も気になる書き手の一人が、伊藤 亜紗だ。この人の持っている課題意識がまず面白いわけで、この本の「さわる」ことと「ふれる」ことの違いに目を向ける切り口にはハッとさせられた。
また、本だけに限らず、そのフットワークの軽さから、あちこちで生み出されるアウトプットのどれもが面白い。

ライティングの哲学 書けない悩みのための執筆論 / 千葉 雅也(著/文), 山内 朋樹(著/文), 読書猿(著/文), 瀬下 翔太(著/文)

www.hanmoto.com

書くことは、例え相当に書き続けているひとであっても、シンドイものであり、そのシンドさと向き合いながら足掻いているのだということを知ることが出来たのは、自分のようなものでも、書くことに対する勇気をもらえた。

闇の自己啓発 / 江永 泉(著/文), 木澤 佐登志(著/文), ひでシス(著/文), 役所 暁(著/文)

www.hanmoto.com

いかに自分の”知識"や"常識"が、矮小で偏見に満ちているものか。それを気付かせてくれた。これぞ、闇の自己啓発

ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論 / デヴィッド・グレーバー(著/文)酒井 隆史(翻訳)芳賀 達彦(翻訳)森田 和樹(翻訳)

www.hanmoto.com

"ブルシット・ジョブ"という概念をもとに考えることで、今社会が直面している課題の解像度が相当に上がることは間違いない。

嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか / 鈴木 忠平(著/文)

www.hanmoto.com

評価が著しく高かったので読んでみたのだが、期待に違わぬ面白さ。スポーツの場で起きているノンフィクションの緊張感が、リアリティをもって伝わってくる。

三体3 死神永生 / 劉 慈欣(著/文), 大森 望(翻訳), ワン チャイ(翻訳), 光吉 さくら(翻訳), 泊 功(翻訳)

www.hanmoto.com

www.hanmoto.com

超大作SF小説、遂に完結。まさかここまでのスケールになっていくとは思いもしなかった。

invert 城塚翡翠倒叙集 / 相沢 沙呼(著/文)

www.hanmoto.com

『medium 霊媒探偵城塚翡翠』にもまんまとやられたが、今作にもあまりに鮮やかにやられてしまったので、心底悔しかった。この小説は面白い。

正欲 / 朝井 リョウ(著/文)

www.hanmoto.com

この小説を読んでから、"多様性"について、何重も深く考えられるようになったと思う。それだけ、生活の中でのものの見方が変わりうる作品。



ワールドトリガー / 葦原 大介(著/文)

blog.tinect.jp

blog.tinect.jp

厳密にいうと、2021年年末から、2022年にかけて、一気読みした。週刊少年ジャンプ時代は毎週読んでいて好きだったのだが、改めて単行本で読んでみた。
いわゆる王道バトル漫画でありながら、単なる超人物語では全くなく、そこで描かれる一人ひとりの文脈が平等かつ丁寧に積み重ねられていく様子が、めちゃくちゃ面白い。これは週刊誌では出来なかったのではないか。
今後も気長に待ち続けながら、読んでいきたい作品。

ひゃくえむ。/ 魚豊(著/文)

open.spotify.com

「チ。 ―地球の運動について―」も、もちろん面白いのだが、今年良く聴いたポッドキャスト「奇奇怪怪明解事典」でTaiTanが勧めていたのが気になって読んでみた。
5巻完結という短さながら、その内容は非常に濃厚。これだけ熱量が詰まっている作品には、否が応でも感情が揺さぶられてしまう。