選択の痕跡

音楽・テクノロジー・哲学

2024.2 Monthly Best Songs

2024年2月に聴いて良かった音楽のまとめです。
Leina、kegøn、Paleduskは最近特に気になっているアーティストだし、柴田聡子はやっぱりとんでもなかった。

  • Songs

宇多田ヒカル「何色でもない花」

www.youtube.com 各種ストリーミングサービスへのリンク

宇多田ヒカルの最新リリースは、フジテレビ系月9ドラマ「君が心をくれたから」の主題歌として書き下ろした新曲。
今作にもプロデューサーには、A.G.Cookの名前がある通り、後半の電子音の鳴りには、最近の楽曲との一貫性を感じる。
それにしても、「Gold ~また逢う日まで~」と同様、楽曲のちょうど中盤から印象がガラッと変わる曲だ。ベースが入ってきてから電子音の趣が強くなっていき、終盤では音の緊迫感が最高潮に高まる。そのハイライトは、電子音の炸裂ではなく宇多田ヒカルのボーカルであると言う点が最も興味深い。

fishbowl「一雨 feat.諭吉佳作/men」

www.youtube.com 各種ストリーミングサービスへのリンク

毎度良曲を生み出し続けている静岡発のアイドルグループによる最新曲だが、この曲は諭吉佳作/menによる歌唱バージョンだ。メンバー歌唱バージョンに先駆けてリリースされた。
fishbowlと諭吉佳作/menは、デビュー曲「深海」でもフィーチャリングしていたので、継続して良好な関係を築けているのだろう。今作はfishbowl新体制としての楽曲でもあるようなので、新たな門出として再出発するという意味で、改めてこの組み合わせになったのかもしれない。

とんでもなく良質なポップスだが、特に印象的なのは、まず諭吉佳作/menのボーカル。昨年ぐらいから良い意味でとても気になっているのだが、いつのまにか、"歌"が前とは別次元の表情を見せている。ここまで歌える人だっけなと思っているのだが、今作もその実力が存分に発揮されている。どの面を切り取っても、シンプルに歌が"上手い”と言っていいだろう。
そして、「一雨」というタイトルの通り、サビで雨のように身体に降り注ぐシンセ音には圧倒される。雨はあまり好きではないが、この雨はカラッとした楽しげがあり、悪くない。

Leina「Highway」

www.youtube.com 各種ストリーミングサービスへのリンク

2024年に衝撃をうけたアーティストのひとり、Leinaの新曲。(名前は知っていたのだが、自分はこれまでreinaと混同していた模様だ、、、)
まずLeinaについては、編集者・ライターの矢島由佳子のレビュー記事で改めて認識した。この記事で紹介されていたEP『tulip』に収録されている「背を向けて寝る癖」を聴いて、鳥肌がたった。このアーティストには何かがあると思った。
それについてはまたどこかで書きたいのだが、そのLeinaの新曲は、Yaffleをプロデューサーに向けた曲だ。
重めに強く鳴るサビが印象的なのだが、そこに真正面から突っ切るLeinaのボーカルの迫力がすごい。結構強いトラックだと思うのだが、全く引けを取らずにむしろ食ってかかるような、良い意味での荒々しさを感じる。
この"歌"は、凄いところまでいくかもしれない。

realsound.jp

realsound.jp

eill「25」

www.youtube.com 各種ストリーミングサービスへのリンク

シンガーソングライターeillがこれまでにリリースしてきた“20”、“23”に続く年齢シリーズの最新作。
年齢をタイトルにするアイデアはシンプルだが、ちゃんと継続しているアーティストは聞いたことがない気がする。その時その時の彼女自身のモードがはっきりと反映されていて、とても良い。
自分に似合うようにどのようにも料理して表現できてしまう、本当に器用なアーティストだと思うが、この楽曲にもその地力の強さを感じる。
今の日本の女性シンガーソングライターの中でも、ずば抜けてディーヴァだなと感じているが、最近はバンドも始めたようだし、着実に積み重ねてきたキャリアが花開いてく様をどんどん見せてほしい。それだけのアーティストだと思っている。

私立恵比寿中学「Knock You Out !」

www.youtube.com 各種ストリーミングサービスへのリンク

私立恵比寿中学による8thアルバム「indigo hour」の幕開けを飾る楽曲。
頭からヒップホップの色味が強いなと思ったら、KennyDoes(梅田サイファー)が手がけた本格的なラップナンバーであり、10人がマイクリレーで自己紹介を繰り広げるドリルチューンに仕上がっている。
アルバム全体的に、ラップのフロウが普通に埋め込まれているのも驚いたし、そのクオリティにも驚いた。
そういった色味は最近のK-Popの雰囲気をどこか感じさせつつも、アイドルらしさや日本のポップスとしてのバランスも丁寧に保っているように思い、もはや"アイドルラップ”は、次のフェーズに辿り着いているのだなと感じる楽曲だった。

LANA「24/7 YOU...」

www.youtube.com 各種ストリーミングサービスへのリンク

バレンタインデーにリリースした1曲は、LANA初のラブソングとのこと。
なんでかはわからないが、渋谷のセンター街でも永遠と流れていて、フックの抜群なフロウとリリックが耳に刺さって離れなかった。

24/7 YOU...
You got me tweakin' baby shit, I like you
みんな talking about うちら街中
次どこいこう?一晩中
I wanna be with you

kegøn「BandAid」

www.youtube.com 各種ストリーミングサービスへのリンク

最近特に気になっている、SoundCloudシーン発のラッパー/シンガー/プロデューサー kegønによる1stアルバム『On The Edge』より。
digicoreの雰囲気を存分に感じさせながらも、特徴的なのは、しっかりと聴こえる歌ではないだろうか。
中盤から転がっていく熱量高いラップに、感情がひたすら高まっていく。言葉が言葉の形を保ったまま紡がれる叫びのようだ。
アルバムの他楽曲では、客演にLil Soft Tennis、safmusic、lilbesh ramko、Asstoro、lazydollを迎えており、この並びを見れば要チェックに違いないだろう。

Paledusk「PALEHELL」

www.youtube.com 各種ストリーミングサービスへのリンク

福岡のバンド PaleduskのNEW EP「PALEHELL」の表題曲より。
こんなバンドがいるなんて、全然把握していなかった、不覚、、、

音楽性は、良い意味で節操がないなと思うが、軸にはラウドロックの流れがあるように感じている。10年ほど前にシーンにはこういうバンドがたくさんいたように思うのだが、最近はだいぶ下火のように感じる。
しかし、コロナ禍を経て、身体性を強く伴うこういう楽曲が、Hyperpopのような電子音やHipHopをも飲み込み、進化した形で目の前に現れている。
冒頭からこんなの良いに決まっているという楽曲だが、Cメロのようなベタな展開をしても、これだけ自由でかっこいいバンドなら、全然OKでしょと思える。
サマソニのヘッドライナーを飾るまでに至っているBMTHと音楽性も含めて繋がっているあたり、今後のシーンにおける重要バンドとなっていく予感がある。
ライブもとんでもなさそうなのだが、SYNCHRONICITYで観れると思うので、本当に楽しみ。(タイムテーブルが地獄だが、、、)

realsound.jp

rollingstonejapan.com

note.com

十明「メイデン」

www.youtube.com 各種ストリーミングサービスへのリンク

新世代シンガーのNEW EP「僕だけの愛」より。
一聴して、特にギターに印象的な音の歪ませ方が耳に残った。改めて聴いてみると、そこまで派手なことをしているわけではないと思うのだが、終始目立つベースだったり、Cメロの壮大な展開だったりを、この素朴な声が印象的な歌でパッケージして届けているのが面白いなと感じる。

Peterparker69, Tennyson「skyskysky」

www.youtube.com 各種ストリーミングサービスへのリンク

Peterparker69とTennysonによる初のコラボシングルより。
これまでのPeterparker69の楽曲の中で最も好きかもしれない。それがTennysonとの共作だからなのか、別の要素が関係しているのかはわからないが、かなり踊れる。
これまでは比較的スムーズな音使いが印象に残っていて、それはそれで心地よさと癖になる部分はあったのだが、今作はかなり"跳ねている”ように思う。
単純にこういう跳ね方が自分の好みなのかとは思うが、曲の枠を飛び越えていきそうなほど、あちこちを跳びはねる音たちが微笑ましい。

RYUTist「君の胸に、Gunshot」

www.youtube.com 各種ストリーミングサービスへのリンク

RYUTistが3人の新体制となってから初の新曲。
これまただいぶ雰囲気のある曲を出してきたなと思って、クレジットを見たらD.A.N.のフロントマン、櫻木大悟さんが作詞・作編曲を担当とのこと。そうきたか、これは良い。
疾走感溢れる4つ打ちビートに乗せるどこか不気味さもあるシンセの鳴りが、まさにD.A.N.だが、そこにこの"趣のある"タイトルとリリックをつけてRYUTistがばっちり表現し切るという構図が、かなり面白い。なんてたって、サビが「ドキドキしてるこのハート/撃ち抜け君の胸に、Gunshot」だからね、、、笑
これをライブハウスやクラブで聴いたら、ぶっ飛ぶのが容易に想像できる。

QUBIT「コンタクト」

www.youtube.com 各種ストリーミングサービスへのリンク

Daoko(Vo.)、永井聖一(Gt.)、鈴木正人(Ba.)、網守将平(Key.)、大井一彌(Dr.)というエグすぎるメンバーにより結成されたバンド QUBITがNHKみんなのうた』に書き下ろした1曲。
先日のライブでも最も印象に残った曲の一つだが、ゆったりとしたグルーヴに、Daokoの甘めのボーカルがたっぷりと乗れば、確かにNHKみんなのうた』にも相応しい仕上がりだ。
日本の街中のどこで流れていてもその場の風景にしっかり馴染みそうな、優しそうな顔をしながらも抜群に力強いポップスだ。

note.com

柴田聡子「Your Favorite Things」

www.youtube.com 各種ストリーミングサービスへのリンク

ニューアルバム「Your Favorite Things」より。アルバムから1曲取り上げるとしたら、やはり表題曲かなと思った。(そういえば、まだユリイカ全然読めてないんだよなぁ、、、)
とりあえずセルフライナーノーツを読んで、APPLE VINEGAR -Music+Talk-の本人ゲスト回を聴けばよいとおもう。ここに全部あるし、ここにないことは聴いて感じとったものが全てだろう。
どこをどう切り取っても良いことを説明できそうで、だからこそ何を言っても空洞化しそうな作品だなと思っている。その意味で本当に豊かだ。

member.shibatasatoko.com

open.spotify.com