選択の痕跡

音楽・テクノロジー・哲学

「リリカルスクールの今後の活動に関するお知らせ」に寄せて

身体のあちこちにつっかえていたしこりが取れたようなすっきりした気持ちと納得感。
そして、少々の驚き。
そんな気分だ。

lyricalschool.com


lyrical school、通称リリスクは、7/24の『lyrical school tour 2022 “L.S.”』ツアーファイナル日比谷野外音楽堂をもって、現体制を終了することが、4/12に発表された。

ここで長く書くつもりはないが、一つの区切りであることは間違いなく、今の気持ちを文字にして昇華しておきたく、これを書いている。

はっきり言って、解散もしくはそれに近しい何かがあるだろうことは、ニューアルバム「L.S.」の発表からの流れの活動の端々から感じていた。そういう人は少なからずいるだろう。

そういう意味では漸くスッキリしたというのが本音なわけだ。とはいえ、ツアーを一部消化した後の火曜日という、あまり文脈の分からないタイミングで発表になったことと、minanのみが残り、準備期間を経たうえで新体制で活動していくという声明には、正直びっくりした。

Twitterを眺めるだけでも、様々な意見・考えがあることが良く分かる。ただ、少なくとも自分は今回の結果に至った裏側は全く分からないし、見える部分だけで判断するしかないわけで、そうやって考えてみると、個人的にはこの体制が長く続くとは思えなかったわけで、そりゃそうだよねという納得感が強い。

あまりにも危ういバランスだと思っていたからだ。5人それぞれの個性が尖っているのにも関わらず、5人揃うと、まさしく完全な五角形が出来上がる。この状況は安定しているようにみえて、そうではないと感じていた。この世で最も難しい事の一つは、上昇するでもなく下降するでもなく、確かなクオリティをもって、継続していくこと・維持していくことだ。今のリリスクが持つ圧倒的なクオリティをもって、下降することは考えられないが、逆にあまりに完成されすぎていて、最先端を行き過ぎいて、時代が追いつくには時間がかかる。果たしてそれだけの時間を待てるのか。リリスクがずっと歌っていた通り、短い人生の中で、そこに"賭け"られるのか。

そもそも、改めて考えてみても、これだけ方向性が違う5人が、lyrical schoolという、文脈もコンセプトも莫大な情報量を持つグループで活動出来ているという事実が、まず奇跡だとしか思えない。そんな奇跡が長続きするわけないわけだが、そういう危うさに魅力を感じていた部分が、正直ある。こんな素晴らしいアーティストを観れる時間はそう長くない。だからこそ、ちゃんと目に、身体に、心に焼き付けておかなければいけない。コロナ禍の中でたまたま見たリモートフリーライブから、リリスクの魅力に取りつかれた自分は、そう思っていた。

もちろん悲しい気持ちがないと言った嘘になる。学校は卒業するものだ。でも、今の時代は学び続けることが必要なわけで、卒業なんてなくたっていいようにも思う。でも、それはこちらの都合だ。本人たちが決めたことは最大限尊重したい。それこそが、この5人での「lyrical school」だったはずだ。

ここまで書いて気づいた。自分は、「今の気持ちを文字にして昇華し」たいのではないのだろう。この5人でのlyrical schoolが、時代に確かな傷跡を残している事実を、確かめたいし、証明したい。だからこれを書いているのだろうな。

最先端のトラックに乗って、ヒップホップに追いついたアイドルラップをバチバチに披露する確かなクオリティと、そこに埋め込まれた偶然性の数々。こんな面白いアーティストは初めて出会った。これまでも何度も書いてきたように思うが、今一番面白いアーティストは、lyrical schoolだ。

ツアーファイナル日比谷野外音楽堂まで残された時間は多くない。惜しむらくは、この5人でのライブを、何の制限もない状態で、自由に声を出して見るのは難しいだろうということ。それでも、来週発売される、名盤となることに違いない「L.S.」は楽しみだし、ツアーもやってくれるし、そのライブの配信も引き続きやってくれるはずだ。是非見逃さないでほしい。是非見逃さないでほしい。好みではないかもしれない。しかし、後から振り返った時に、確実にエポックメーキングとなる。それが今のlyrical schoolだ。なってほしいというただの願望かもしれない。それでも、リリスクの"今"を、出来るだけ多くの方に体験してほしい。

「明日、急に世界が終わる可能性があるなら」。そんなIFが現実に突き付けられている2022/4/12。この深刻な状況の中で、一体どんなパフォーマンスを魅せてくれるのか。今は、ただただそれを楽しみたい。

これを書き終わった今は、そんな気分だ。歪でもまやかしでも、ライブが無事出来るような平穏の日々が続き、そして何よりもメンバーが健康で、最後の瞬間まで、元気に、楽しく駆け抜けてくれることを祈る。

そんなことを思っていたら、横目に観ていた日曜日の仙台公演のアーカイブがもうすぐ終わるようだ。毎度毎度楽しそうに、良いライブを魅せてくれることだ。

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