2019年4月にリリースされた曲・アルバム、もしくは発表されたMVから特に良かった10曲を選びました。
おまけでその他で良かった曲や、観たライブの感想なども書きましたので、良かったら是非。
■Songs
10:そこに鳴る「業に燃ゆ」
大阪の2ピースバンドの4/3リリースのEPから。
このバンドの特徴は、とにかくテクニカルでポップでメタルなサウンドを、これでもかと詰め込んでいるところだろう。
今回選んだ曲も、頭から、とにかく一筋縄ではいかない展開と、ギター・ベース・ドラムそれぞれが鳴りまくる音が印象的。
この曲は特に、時折織り交ぜられる四つ打ちパートのポップさが、テクニカル部分とのギャップにより引き立てられてる部分が気に入った。
まだ知名度が低いように思えるが、曲のクオリティは文句なしだし、音のキャッチーさ、個性もバッチリなので、何かのキッカケで一気に人気が出てもおかしくないバンドだ。
同EPからの「絶対的三分間」も非常に良かったのでどちらを選曲するか迷った。
こちらは、鋭いギターが刻むリズムなどよりテクニカルな部分がカッコよい。
タイトルと3分ピッタリに収めた時間からは、東京事変の「能動的三分間」も個人的には想起させられて面白かった。
9:Serph「Angel Flow」
東京在住の男性によるソロ・プロジェクトSerphの9か月連続シングルリリースの第1弾。
Serphの曲はこれまであまりちゃんと聴いたことがなかった気がするが、今回の曲を聴いてそのクオリティの高さにびっくりした。
6分という比較的長めの曲だが、その中身は多種多様なアプローチで展開されていく曲に、驚かされるばかり。
中盤の4小節ごとにビートのリズムが変わるパートは、特にお気に入り。
さらっと聴き流していても心地が良いし、がっつり踊ることもできるし、じっくり聴きこむ面白さもある、9か月連続シングルリリースの第1弾に相応しい曲となったのでは。
8:江沼郁弥「偽善からはじめよう」
元plentyのボーカル江沼 郁弥が昨年始めたソロ活動の新曲より。
plentyはほとんど聴いたことないと思うのだが、何よりタイトルに惹かれるものがあった。
「偽善からはじめよう」という言葉にまず強さがあるように思う。
実際の曲の内容も、タイトルに負けず劣らずのパンチラインだらけ。
そのパンチラインを、幻想的な雰囲気を醸し出す音作りと、特徴的な高音ボーカルが、よりくっきり際立たせている。
ライブでは木(KI)がサポートするらしいという所も、気になるポイント。
確かにこの音は木にぴったりかもしれない。
ライブも是非観たいと思わせる面白さのある1曲だ。
江沼郁弥×木(バンド)ライブの完成度の高さ - Real Sound|リアルサウンド
7:Kan Sano「Start In Your Eyes」
最近名前を観る機会が増えてきたキーボーディスト/トラックメイカー/プロデューサーであるKan Sanoの5/22発売の4thALからの先行配信リリース曲。
様々なアーティストのサポートもこなすKan Sanoの実力は折り紙付き。
ジャズなどのブラックミュージックを感じる心地よい空気感に、キャッチーな鍵盤が時折顔を出しながら、そこに幻想的なボーカルが絶妙なバランスで混じり、これ以上ない極上な音楽に仕上がっている。
個人的には、この曲調に日本語詞がとてもうまく乗せている点が流石と感じる。
終始良い仕事をしているハイハットと、ハイハットのリズムと描かれた情景が素晴らしい、以下のフレーズがとてもお気に入りな1曲。
屋根裏のハイハット
まだ開いたまま
重なる時を待ってる
6:Mrs. GREEN APPLE「How-to」
ネクストブレイクの筆頭にも挙げられる5人組ロックバンドの4/3リリースの9thシングル「ロマンチシズム」からカップリング曲を。
この曲は 『エアアジア』のCMソングとして書き下ろした楽曲とのこと。
ミセスの曲はこれまでも関ジャムなどで評価されることもあり、良曲が多い印象。
特にその壮大な展開を見せる曲調は、同世代のロックバンドの中でも頭一つ抜けたクオリティを誇っていると思う。
ただ、ミセスの面白さは、時折見せるEDMを軸にした強烈な音にもあると個人的には思っている。
「WHOO WHOO WHOO」や「WanteD! WanteD!」での打ち込み主体のバキバキなサウンドには、ロックバンドの枠を超えている。
今回の「How-to」では、ミセスの"壮大な曲調"と"EDMベースの凶暴な音"を融合させた1曲になっていると思う。
イントロから、スタジアムにぴったりのコーラスが響きわたり、サビではシンセが暴れる展開は、これまでのミセスから一歩先の世界を見せてくれている。
この路線は自分はとても好きなので、是非今後も突き詰めていってほしいところ。
デカい会場でこの音が響き渡るシーンを想像すると、ワクワクする。そんな1曲だ。
5:SUSHIBOYS「DRUG」
2人組ヒップホップクルーの新曲。
昨今何かと話題の"DRUG" だが、"音楽"こそが"DRUG"でしょ!と、SUSHIBOYSらしく、前向きに鳴らす希望溢れるトラックとラップに救われる。
トラックとしては、イントロから鳴る印象的なブラスが、曲の表情を豊かにしていると思う。
このタイミングでこういう曲を出せる彼らが大好きだ。
エビデンス脱退後、2人でのリリースは今回が初だが、今後もやっぱり期待できるなと思わせてくれた。
4:BLACKPINK「Kill This Love」
韓国の世界的ガールズグループの最新EPの表題曲。
MVが1億再生されたスピードも話題になったが、曲のクオリティが凄まじい。
刺激の強いタイトルと勇ましいトラックが強烈な印象を与えるのだが、そこに力負けしない彼女たちのパフォーマンス。
キャッチーな振付のキレキレなダンスも、曲調とピッタリで印象に残る。
とにかく"カッコ良い"の一言。
必要な要素を最高のクオリティで揃えれば、ガールズグループがこんなにカッコ良い曲を作れるのかと驚かされた。
これだけ、どれもこれもクオリティの高いグループなのだから、世界的な人気になるのも頷ける。
サマソニでのアクトがとても楽しみなアーティストの一つだ。
3:松木美定「実意の行進」
またもや見つけたSSW、松木美定(まつきびてい)。
例によって情報が少なく、ご本人のtwitterとブログぐらいしか情報がないのだが、仕事をしながら楽曲制作をしている方とのこと。
人生2作目という「実意の行進」は、打ち込みでカラフルな音を詰め込むことが全盛の時代において、ピアノ・ベース・ドラムのシンプル構成で、とんでもなく綺麗な曲に仕上げられている。
ボーカルと歌詞も含めて、休日の午後にぴったりの、何とも言えない心地よさ。
時折良い意味で引っかかりのあるメロディや和音の響き、曲の細かな展開は、とにかく癖になる。毎回ニヤけてしまう。。。
色んな音が入っていればいいってもんじゃないぞということを改めて思い知らされた。
現在絶賛アルバム制作中で、サブスク展開も今年中には、とのことなので、期待して待ちたい。
今年大注目のSSWの1人として一躍名を上げたことに間違いはないだろう。
2:パスピエ「ONE」
4人組バンド パスピエの5/22リリース予定の5th Full Album「more humor」から先行公開されたリード曲を。
正直驚いた。
パスピエは結構初期から聴いていたのだが、この曲は彼らの新境地を開いた1曲のように思える。
やや不穏なシンセフレーズとコーラスで幕を開け、その後も盛り上がり過ぎず、盛り下がり過ぎずの絶妙な温度感で進行していく。
歌も、全体的に抽象的で、なんとも言えない浮遊感を感じさせるフレーズが並ぶ。
そういった"曖昧さ"を残した空気感は、音作りにも表れているように思える。
サビでは、シンセフレーズが耳に残るが、よく聴くとそれぞれのパートが複雑に混ざり合うように鳴っている。それぞれの音が、音の渦に紛れているようだ。
比較的ノリのいい曲を軸に駆け上がってきたバンドという印象だったが、今作のあえて狙っているだろう歌詞や音作りには、バンドとしてネクストレベルに行くんだという意思を強く感じる。
是非、アルバムを聴いて、今回自分が感じた印象が実際のところどうなのか、確かめてみたい。
1:RIRI,KEIJU,小袋成彬「Summertime」
資生堂「アネッサ」CM曲のタイアップ曲として制作された1曲。
小袋成彬プロデュースの元、KANDYTOWNのラッパーKEIJUと若手シンガーのRIRIをフィーチャーし、完成したこの曲。
曲の出来には、文句の一つもない。
KEIJUのヴァースからは、小袋成彬プロデュースという匂いを感じさせながら、フックのRIRIのボーカルは、ポップスとして素晴らしいメロディを奏でている。
終盤のボーカルチョップを取り入れた展開も秀逸。
これが、CMソングになるということで、是非次世代のポップスとして鳴ってほしい1曲になったと思う。
小袋成彬、KEIJU、RIRIそれぞれの楽曲とは違った雰囲気に仕上がっており、それぞれがこれまでとは違う一面を見せることが出来たとも思う。
特にRIRIについては、これまでのEDM主体の曲調とは違った曲でも、ここまで印象深い歌が歌えるということを証明したのは、今後の活動に良い影響を与えるに違いないと思う。
ただ、唯一残念なのは、MVがショートバージョンしか公開されていないこと。
話題性もあって、曲もとても良くて、記事まで出ているのに、なぜフルを出さないのか。。。。
こういう曲が国内にも国外にもしっかり広まってほしいと思う一方で、日本の音楽業界のやり方に改めて疑問を感じ、まだまだ変わらなければいけない部分が多いんだろうと考えるきっかけになった、良くも悪くも印象深い1曲となった。
■Other Songs
振り返ってみると、4月はアルバム単位で聴いたものがほとんどなかった。
3月に色々出過ぎたからだろうか。
代わりに、今月は、10曲に入りきらなかった曲がたくさんあるので、
その曲を簡単に紹介していくことにする。
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Shin Sakiura,Opus Inn「Partner (feat. Opus Inn)」
トラックも ボーカルも、どこかへ飛んでいけそうな浮遊感が最高である。
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millennium parade「Veil」
King Gnu常田大希のソロプロジェクト。彼が一体何をしでかしてくれるか、楽しみだ。
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CHON「Peace」
アメリカのマスロックバンドの新曲。CHONは音もすこぶる良い。派手な展開はないが、憎い工夫だらけだ。
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霧島夜空「行列#3」
こちらも謎のSSW。"君島大空"と字面が似ていなくもない。曲は君島大空よりも凶暴だが、ボーカルからは繊細さも感じさせる。MON/KUとの親和性もあるのでは。
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Official髭男dism「Pretender」
このバンドのメロディセンスは一体どうなっているんだ。。。
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カネコアヤノ「愛のままを」
シンプルな音作りとは対称的に、大胆な曲の展開が、非常に印象的。
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エイプリルブルー「エイプリルブルー」
シンプルだが、シンプルが故に、メロディの良さが一直線に届いてくる最高のシューゲイザー/ドリーミーポップ。
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RYUTist「センシティブサイン」
シンリズムプロデュースということで納得のクオリティ。最近のアイドルグループだと、"桜エビ〜ず"と"RYUTist"は外れがない。
RYUTistは新潟出身ということで、このキラキラさも相まって、Negiccoを想起させられる曲の良さ。
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Kabanagu「DIVERGENT」
最近知ったトラックメイカー、kabanagu a.k.a.カバを殴る仕事。
この曲からは、所々デデマウスやbanvoxの曲の雰囲気を個人的に感じるものの、そこに留まらない思い切りの良さが清々しい。とにかく踊れる。
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浦上・ケビン・ファミリー「金星の呼気」
浦上・ケビン・ファミリーの新曲は、それはもう良い。この言葉選びと音選びのセンス。こんな不思議な雰囲気を作り出せるのは彼しかいない。
色んなところでフックアップされ始めているのも当然。
■Lives
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4/6,7 SYNCHRONICITY’19 @渋谷
改めてシンクロニシティは日本一のフェスのひとつだと思う。それぐらいの内容だった。
このタイミングで、長谷川白紙やDos Monosが観れたのは特に良かった。
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4/12 石若駿とナイーブの友情 vol.1 @六本木VARIT.
若手注目株の木(KI)と石若駿率いるSMTKのツーマンライブ。
木のドラマーのナイーブと石若駿の繋がりから開催されたこのイベンド。
あまりに刺激的すぎる夜だった。
木の長尺ライブは初めてだったが、その自由自在な音使いで、世界観に完全に引き込まれてしまった。やっぱりこのバンドは面白い。
SMTKは、職人という感じ。石若駿のドラムだけではなくて、その他のメンバーも一流だった。
なんというか、いわゆるポップスからは少し離れた、"ハイセンス"な夜だった。
※以前観た木のライブの感想。
■+α
その他、気になった音源を2つ。
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Suspended 4th「INVERSION」
遂にSuspended 4thのEPがサブスクに追加された。
Youtubeの再生回数も伸びているし、一気に来るか。
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colormal「夢みる季節」
2018年1月のリリースだが、 紹介したい。
家永亮によるソロプロジェクト「colormal」のEP、「merkmal」から。
昨今のSSWの流れで聴くと、このアーティストもすごく面白い。
この曲はイントロから序盤にかけては、打ち込みを前面に出した展開になっているが、気づくと、邦ロックのような雰囲気も感じるキャッチーなサビに突入していく。
その他にも自由自在に展開する6分半からはセンスしか感じないので、要注目だ。
以上、2019年4月に聴いた音楽のまとめでした。
4月の曲は、何度も聴く中で色んな良さが理解できる、深い曲が多かったような気がします。
5月もきっと良い音楽がたくさん聴けるでしょう。
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