選択の痕跡

音楽・テクノロジー・哲学

2020.6 Monthly Best Songs

2020年6月にリリースされた曲・アルバム/EPから特に良かった10曲を選びました。
なかなか面白い並びになった気がします。

  • Songs


10:BIN「シニカル」

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BINは、ボカロPの猫アレルギー、絵師のWOOMA、歌い手のyamaの3人で結成された音楽ユニットのようで、情報はそんなにないものの、各種ストリーミングの再生回数は多いという今っぽいユニット。
これまでも何曲かリリースされており、気になってはいたところ、この曲の雰囲気は特に気に入った。
イントロの、シンプルだが耳に残るシンセフレーズから疾走感を感じさせ、ベースもシンセを追いかけるような音を打ち出していく。そこに乗るボーカルも非常に聴きやすい歌になっていながら、疾走感満載で、情報量の多さを感じさせないあっという間の3分間。
remarkable point:曲を印象付けているシンセのキラーフレーズ。ちょっと物足りなさを感じさせる辺りがなかなか憎い。

9:wasabi谷口鮪×津野米咲)「sweet seep sleep」

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KANA-BOONのギターボーカル谷口鮪と、赤い公園のギター津野米咲が結成したユニット。 このコロナ禍をきっかけに結成に至り、この曲もリモートで制作された。
「"みんなが安心して眠れますように"という願いが込められたメロウなミドル・ナンバー」とのことで、イントロのギターやキーボードの音色から、優しさの感情が溢れんばかりに伝わってくる。
最初に名前を見たときはこの組み合わせには驚いたが、津野米咲のキャッチーかつ絶妙なアレンジに、谷口鮪の耳に染み渡るようなハイトーンボイスがぴったり噛み合っている。
シンプルな構成ではあるものの、今っぽさも感じる音になっているところには、話の中で君島大空の名前が出ている辺りも関係しているか。
ちなみに、"wasabi"の由来はなんだろうかと思っていたのだが、鮪×米からということで、なるほど、そりゃ合わないわけないな。

spice.eplus.jp

remarkable point:"みんなが安心して眠れますように"と思いが、とにかく優しく伝わってくるフックのメロディと歌。

8:Rin音「Summer Film's feat. クボタカイ, 空音」

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「snow jam」がめちゃくちゃにバズり、Mステにまで出てしまったRin音の1stアルバム「swipe sheep」より。
この曲の面白さはフィーチャリングだろう。Rin音自身は福岡出身のラッパーだが、クボタカイも福岡を拠点に、空音は兵庫を拠点に活躍中ということで、まずその地理的な関係性が興味深い。
加えて三者とも2000年前後生まれということで、世代的な特徴も面白い。
この大都市からちょっと外れた地理的関係性、そして新世代としての感覚、そういったものがグルーヴとして存分に発揮されているのがこの曲ではないだろうか。
チルな雰囲気もあるトラックに、一つひとつの言葉やフロウに力が入り過ぎずに伸び伸びとしたラップが気持ちよく乗り、ラブソングを紡ぐ。 何かドラマティックな展開が待っているわけではない。 でも、"今"って感じで最高だ。
remarkable point:心地よい3人のマイクリレー。冒頭のシグネチャサウンド(って言うんですかね)も何だか微笑ましい。

7:m-flo loves chelmico「RUN AWAYS」

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昨年でメジャーデビュー20周年を迎えたm-flo。そんなm-floが2004年から2008年にかけて、さまざまなアーティストとコラボレーションする“loves”プロジェクトを、今年3月再始動。
そのプロジェクト第2弾として2人組女性ラップユニット chelmicoとコラボしてリリースしたのがこの曲。
この曲はとにかくドラムンベース調なビートに合わせて、m-floのLISA、VERBAL、chelmicoのRachel、Mamikoの4人が見せるそれぞれの高速ラップがめちゃくちゃにカッコ良い。
やり過ぎなぐらいな過剰なブレイクビーツに負けないぐらいの、スキルフルでキレキレなラップは必聴。
とにかく展開も激しく刺激的なのだが、これだけ大胆なトラックを作っても、曲全体としてはしっかり形作られているように感じる辺り、ベテランの音作りって感じだ。

remarkable point:高速なブレイクビーツにがっつり乗っかる4人それぞれの高速ラップ。

6:三浦大知「Yours」

三浦大知の新曲。情報が少ないのだが、もともとはYoutube限定で公開した曲を配信したようだ。
ジャケットからも並々ならぬ覚悟のような感じる仕上がりだが、最近の三浦大知の攻め方は恐ろしい。
「球体」から見逃さないようにチェックしているが、どの曲もJPOPの枠を大きく超えるクオリティだ。
この曲も、イントロから緊張感が高く、身構える程。そこから無機質な電子音をベースに、三浦大知の歌で少しずつ開けていく感じがしたと思ったら、まさかのフック。
いわゆるボーカルなしのドロップを、思いっきりぶち込んできた。いや確かに「飛行船」もこういう展開だったではあったし、最近のトレンドではあるとは思うが、三浦大知ほどの歌唱力を持つJPOPアーティストが、そう何度もこの展開を持ち込んでくるとは思わなかったので、びっくりしてしまった。
それだけトラックへの信頼感があるという現れでもあると思うし、この人の孤高なカッコ良さが存分に表現された1曲だろう。

remarkable point:ジェットコースターのようにダイナミックなドロップ。

www.crying-thankyou.com

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5:TASK「窓の無い部屋」

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ボカロPのTASKが、VOCALOIDのGUMIの歌で作成した1曲。
ボカロのことは全然分からない。本当に分からないのだが、この曲は以下のツイートで拝見し、聴いてみた。 チップチューンがとても鮮やかに感じるが、そこに乗る歌とリリックがめちゃくちゃが良い。
ボカロって、こんなに情緒を感じるような歌を歌えるのかと、正直びっくりしてしまった。とにかくひたすらにエモい。これぐらいしか言えないのが悔しいぐらい。 ボカロ舐めてた、反省。

remarkable point:始まりと終わりの"光の差す方へ 視界を開く 向こうへ"というパンチラインだけで、光景が目の前に浮かんで、なんだか感情が高まる。

4:パスピエ「真昼の夜」

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パスピエの新曲は、いつものごとく、なんだか変な曲。
タイトルからして、強烈な違和感をかましてくるわけだが、曲自体も、イントロからその違和感に負けないぐらい不思議な感覚の音の連続だ。展開が良く分からんが、これぞパスピエだろう。
ちょっと不安になるようなシンセフレーズが終始あっちこっちで鳴っている中で、大胡田なつきの安定感あるボーカルと、この音の中でタイトに曲を推進していくドラムが、曲の軸を強力に担っているが故に、こんな変な曲でもまとまりが出ているように思う。
全然知らなかったのだが、この曲は目薬のロート製薬とのコラボレーションらしく、大胡田なつきも目薬の使い心地をヒントにしているとのこと。正直今のところは全然分からない。
ただ何かありそう感を感じさせるのがとても上手いバンドなので、意味の分からなさの中でも聴きこめば聴きこむほど、きっと何か見えるのではと思える。そういう音だ。

remarkable point:イントロの疾走感ある展開。最近のパスピエのイントロはとても好み。

3:空音「Fight me feat. yonkey」

Rin音の曲にもフィーチャリングで参加していた空音の2ndアルバムからリードトラックを。
アソビシステムによるオーディションで発掘された音楽プロデューサー、yonkeyとのフィーチャリングであり、エレクトロ感あるHIPHOPで、爽やかでダンサブルな1曲になっている。
そして、この曲で最も惹かれたのはリリック。
良くあるリリックだとは思う。最初はそこまでしっくり来ていたわけでもなかった。でも、ある日この曲を聴いてなんだかハッとさせられた。
優しく放たれる一つひとつのフレーズ、パンチラインに、不思議な威力がある。きっと聴き手の状況に合わせて、必要なときに飛び込んできてくれる音楽だ。こういうピースフルなHIPHOPは本当に良いなと思う。
大好きなフレーズが、そこかしこに溢れている大好きな1曲だ。

勇者の剣は 空から降らないし
腹ぺこで ぶっ倒れそう けど
君しか鳴らせない音を鳴らせ

敵はいつも
鏡に映る自分だけ
それ以外いつも
贅沢な経験値なのさ
君はいつも
君でいればいいだけ
年齢を経験値にしちゃダメだよ
Level 100 超えた自分に会いに行こう

remarkable point:"年齢を経験値にしちゃダメだよ/Level 100 超えた自分に会いに行こう"というリリックにはハッとさせられる。我々はいつからか年齢を経験値に見立ててしまっている。そんなものただの数字でしかないだろうって気づかされる。

2:君島大空と塩塚モエカ「サーカスナイト」

七尾旅人の名曲"サーカスナイト"を、君島大空のガットギターに、羊文学の塩塚モエカが歌を乗せる。
説明不要の1曲。良くないわけがない。感情を揺さぶる。
remarkable point:言葉に出来ない、最高の空気感。

1:MELLOW MELLOW「最高傑作」

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最高傑作

最高傑作

  • Mellow Mellow
  • J-Pop
  • ¥255
music.apple.com

メンバー全員の身長が150cm以下という3人組ガールズユニット、MELLOW MELLOW(メロウメロウ)の新曲。作詞・作曲・編曲が小西康陽ということで話題を集めている。
正直なところ、昔の音楽に詳しくないので小西康陽については聴いたことがあるぐらいだったが、Negiccoの「アイドルばかり聴かないで」をプロデュースした人と聴いて、とても納得してしまった。
この曲を聴いたときに、すぐにNegiccoを思い出したからだ。この正統派感。それでいて圧倒的に高い音楽の質。こんなユニットがいたなんて全然知らなかった。
最初から最後まで、常にダンサブル。そしてブラスの入れ方、ギターが生み出すアクセント、シンセの光り方、どれもをとっても、まさにこれだよという感じ。もちろん3人のボーカルも、透明感がありつつも、曲に負けじと躍動感がある。これはどこにも隙がない。隙がなさすぎて恐ろしい。
アイドルポップスにはそれこそNegiccoなど、名曲がたくさんあるが、この曲はそういう流れの中で見ても、まさに"最高傑作"と言える1曲ではないか。

remarkable point:"最高傑作"の名にふさわしく、3分22秒の間、一切の隙のなさ。あえて言うのであれば、この終始ダンサブルな展開の中で、2:35辺りで最後のサビ前で、時が一瞬止まったかのような展開にはハッとする。

mikiki.tokyo.jp

  • Albums/EPs


DAOKO「anima」

DAOKOのニューアルバムには、はVegpher(杉本佳一)、網守将平、永井聖一(相対性理論)、小袋成彬スチャダラパー、TAKU INOUE(井上拓)、大井一彌(DATS/yahyel)、Tyme.(Tatsuya Yamada)、DJ6月、Chip Tanaka、pxzvcといった、凄いラインナップのミュージシャンが参加している。
正直、なぜDAOKOがここまで数多くのアーティストの目を引くのか、あまり良く分かっていなかった。小袋成彬との「御伽の街」で分かりかけたと思ったら、今作でまた分からなくなったのが正直なところ。
しかし、「anima」に象徴されるような、そういうミステリアスさが、彼女の魅力なんだろうと思うし、やはり目は離させないほどの吸引力はあるなと思う。

natalie.mu

Laura day romance「farewell your town」

東京を中心に活動中の4人組男女ツイン・ヴォーカル・ギターポップ・バンド。
この耳に優しいインディーポップスを聴くと、心が安らぐ。

ototoy.jp

Rin音「swipe sheep」

「snow jam」だけじゃない。他のどの曲も一聴の価値あり。

ステレオガール「Pink Fog」

ステレオガールも何回かマンスリーベストに選んでいるが、どの曲も質が高くて本当に驚く。
音は色々混ざっているかもしれないが、自分はステレオガールの音からは、真正面から音楽と向き合っている正統派な日本のバンドだと感じる。音の一つひとつから、なんだか強さを感じる。

www.cinra.net