選択の痕跡

音楽・テクノロジー・哲学

2021.5 Monthly Best Songs

2021年5月にリリースされた曲から特に気に入った10曲を選びました。アルバム/EPについても簡単にセレクトして付けています。今月も時間があまり取れず、簡略版です。

  • Songs


10:浦上想起「爆ぜる色彩」

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2021年初となる浦上想起のリリース。一聴して、もう浦上想起節が炸裂していることがわかる。でも楽曲自体は、何が何だかよく分からない。いや分かるんだけど、分からない。シンプルな理解を阻まれ、頭がかき回されるような、そんな感覚。これは、何度聴いても新しい発見があるタイプの曲だ。タイトルの通り、多様な色が、鮮やかに爆ぜる絵が、一つひとつの展開の中で、都度都度目に浮かぶ。難波優輝さんのnoteも、なるほどと思った、必読。

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9:TELE-PLAY「prism (feat. 原田郁子, ROTH BART BARON, Seiho & Ryo Konishi)」

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TELE-PLAYは、コロナ禍に生まれたリモートコラボ音楽制作プロジェクト。仕掛け人は、クレジットにも入っている、CRCK/LCKSや象眠舎の小西 遼。クラムボン原田郁子、ROTH BART BARONの三船雅也、そして小西 遼の3名が完全リモートで楽曲を共同制作したこの曲を、さらにSeihoがトラックメイクしている。この名前の並びだけで、破壊力がやばい。イントロからリフレインするように響き渡るガットギターのリフが、全体的に緊張感と穏やかさの両方が混ざったような景色を見せてくれる。ROTH BART BARONの、胸を鷲摑みにするような壮大な迫力が印象に残る展開ではありつつ、その"先"も随所に感じられるような、そんな曲。

spice.eplus.jp

8:Omoinotake「彼方」

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東京国際工科専門職大学・大阪国際工科専門職大学・名古屋国際工科専門職大学の2021年度TVCMソングとしても流れているそうだが、とにかくイントロだけで勝負あり。メロディもボーカルも素晴らしい。歌詞だけ見ると、なかなかに簡単には歌えないような、ある意味気恥ずかしさすらある言葉が並んでいるのだが、それが全くそうは聴こえないほど、気迫と想いが乗った歌になっているから、とても"届く"。ストリングスも全く過剰に聴こえないほどの歌の力強さ、ここにこのバンドの力強さを感じる。頼もしいバンドだ。

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7:TAMTAM「Quarantine Routine」

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こちらもイントロでやられた。このリズム、このグルーヴ、ここまで深く響くやつは、久しぶりに聴いた気がする。この余白だらけのバンドサウンドの上を、自由気ままに泳ぎ回るKuroのラップ風味もあるボーカルが素晴らしい。音源にここまでの現場の空気感を詰め込めるのか、という驚きすらある。ライブでやったら、一体どんなことになっちゃうのか。

sensa.jp

6:ポルカドットスティングレイ「トーキョーモーヴ」

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またまたイントロでやられた。プレフックから始まるこの曲。ありがちで、ちょっとあざとさすらあるカウントの入れ方が、なんだか微笑ましい。そして、なんだ、この軽快さ。ギターの単音リフも、ブラスっぽい音の入れ方も、まぁ驚きがあるわけではないのだが、全部が合わさると、この重苦しい状況の中でも、なんだか翔べちゃいそう。(ちなみにリリックは、その軽快さとは正反対。ひたすらなどろどろ加減が、これはこれは興味深い、てか普通にめちゃくちゃ怖い。。。)
ポルカのやっていることは、毎度そんなに新しいわけではないと思うのだが、それでもちょっと角度が違うところからの表現になっていて、新鮮に聴ける。良いバンドだと思う。

5:natsumi「イージーゲームfeat.和ぬか」

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natsumiのことは知らなかったのだが、和ぬかの名前に釣られて聴いてみたら、大当たり。ちなみに、natsumiは、TikTokでの弾き語り配信などで注目を集めるシンガーソングライターとのこと、TikTokは全然追えん。。。
そして、この曲は、和ぬかの特徴である、和の要素が、リズム面でがっつり出ていて、めちゃくちゃ良い。特に、ヴァースでの太鼓っぽいタム回しや、フックの祭り感満載のダンサブルな展開は、シンプルにアガる。一聴しただけでは追いきれない、随所に散りばめられて、多様な音の数々も面白い。

4:BBHF「黒い翼の間を」

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個人的に、BBHFの信頼感は半端ない。物凄くストレートで、キャッチーで、ポップ。フックで一気に拓ける世界に、自然とガッツポーズが出る。Galileo Galileiの時からそうなのだが、なぜこうも琴線に触れるのか。シンプルなのに。シンプルだからこそか。これぞポップスだ。

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3:Official髭男dism「Cry Baby」

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日本のポップスはここまで来たのか。誰かが言っていたが、これが一般のリスナーに受容されるようにまでなったというのは、シンプルに凄い。そこを切り開いてきたのは、特に直近では、髭男であるのは間違いないので、彼らの功績と言ってもいいだろう。加えて、この曲は、以下の制作裏話が特に良すぎる。こういう偶発性を楽しんで曲作りに活かせるのが、彼らの今の良い雰囲気を表しているとも思う。ここまでやれちゃうなんて、無敵モードがどんどん深化してる感すらある。

一般的なポップ・ミュージックでは考えられないような急激な場面転換が繰り返される。これは制作中の「ピアノを不意に間違えてしまったんです。でも、それが結果的にすごい転調の仕方をしていて面白くて!」という偶発的な閃きを、原作のテーマであるタイム・リープに絡めて仕上げたものであり、楽曲の変則的な展開が表現上の必然性を伴うかたちで美しく活かされている。

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rollingstonejapan.com

2:Isagen「Shoot you with my love」

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タイムラインで流れてきて、何の気なしに聴いてみたら度肝を抜かれた。調べてみたら、TREKKIE TRAXからのリリースということで納得。綺麗なメロに、過剰なまでにダンサブルなビートと展開。なんていうのか分からないが、怒涛のように音の弾丸が暴れまわる中盤は圧巻。これはぶっ飛ぶわ。これだけ暴れまわっても、最後は戻るところに戻って、綺麗に締める。これは最高のエレクトロ。

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1:RYUTist「水硝子」&「mizugarasu - ウ山あまねremix-」

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各種ストリーミングサイトへのリンク:水硝子
各種ストリーミングサイトへのリンク:mizugarasu - ウ山あまねremix-

変則的だが、1位は2曲。この2曲だけで一晩語れそうな気がする。個人的には宇多田ヒカルと2021年の上半期のトップを争う。
書きたいことは無限にあるが、とにかく、君島大空に全面プロデュースをお願いしたというのも、さらにそこにリミックスをウ山あまねにお願いしてしまうというのも、それをやったのが、透明感抜群で何色にも染まれるRYUTistだったというのも、すべてが最高で最善の選択であったように思う。曲の1秒ごとに言及したいぐらい濃密な楽曲になっているが、いくら時間があっても足りなそうなので止めておく。
個人的なハイライトだけ書いておくと、ウ山あまねremixバージョンでの、最初のフック。なんでそうなるんだよ!!!!!と爆笑してしまった。君島大空とウ山あまねという、今日本で最も注目すべきアーティストが、こういう形で共演するなんて、最高過ぎる。必聴。
それにしても、RYUTistの制作陣の無双具合は一体何なのか、、、いつかRYUTistと制作陣が勢揃いしたフェスとか観てみたい。

  • Albums/EPs


black midi「Cavalcade」

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今回はちょっとクラシカルな感じがする。あまり聴き込めていないが、それでも分かる変態加減。荘子itと崎山蒼志の対談もめちゃくちゃ良かった。

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www.ele-king.net

ポルカドットスティングレイ「赤裸々」

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ジャケットも、4曲という曲数も、その一つひとつの曲も、すべてが軽快。この軽やかさはどこから来るのか。

Isagen「Sh」

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「Shoot you with my love」で爆発するわけだが、そこに至るまでの道筋もめちゃくちゃ良い。ひたすら綺麗な音像だ。