選択の痕跡

音楽・テクノロジー・哲学

2021.4 Monthly Best Songs

2021年4月にリリースされた曲から特に気に入った10曲を選び、コメントを書きました。アルバム/EPについても簡単にセレクトしてコメントしています。時間があまり取れず、簡略版です。

  • Songs


10:yuma yamaguchi「ベガーズオペラ (feat. 七尾旅人)」

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今回初めて知った作曲家の曲だったが、フックの展開と音の壮大さ、ドラマチックさには、シンプルに驚き。七尾旅人の起用もバッチリ。トラックに強さがある曲だとは思うが、七尾旅人の歌はそこに全く負けない強さがある。

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9:a子「As I landed on Mars」

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最近よく名前を見る女性シンガーソングライターの新曲は、囁くように紡がれる歌と、リズミカルで跳ねるようなギターリフ・シンセリフが印象深い。全体的に、勢いは抑えられて、その中での音の質感が面白い。序盤にだけ出てくるギターのストロークには、ロックやちょっとローファイの雰囲気も感じたんだが、曲が進むにつれて、表情は少しずつ変わっていく。ドラマチックな展開はないが、少しずつ変わっていく、その細微の美しさが、このアーティストの良さな気がする。

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8:4s4ki「FAIRYTALE feat. Zheani」

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ポップシーンで、日本のHyperpopを牽引する彼女。明らかにHyperpopの匂いが充満している曲に対して、ちゃんと4s4kiとしてのポップネスが軸として生きている。そこに可能性を強く感じる。Hyperpopという文脈を通して、日本のポップネスを巻き込み、混ぜ合わせ、4s4kiの音楽として表現していく。そんな未来が予感される楽曲。

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7:Ado「踊」

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Adoの楽曲はいつも興味深いが、この曲は特に面白い。洒落の効いたタイトルも良いのだが、何より凶暴なまでにダンサブルな楽曲なのに、一切、Ado自身の"顔"も"身体"もぼやけていて、はっきりとは見えない点が面白い。頭に浮かんでくるのは、アニメーションのみ。そりゃそうだ、顔出ししていないのだから。そういう身体性の欠如の中で、こういう身体性をバチバチに感じさせるような楽曲をやるという点に、アンビバレンスな感覚がある。そう考えると、彼女の声自体にも、とてつもないほどの記名性があるわけで、分かりやすいポップネスがあるにも関わらず、"顔"も"身体"も、はっきりと認識できないという状況は、とても奇妙だ。リスナーの中には、無数のAdo像が出来ていることだろう。最早顔出しなど不要な世の中ではあるが、このままアニメーションの世界でのAdo像を提示していくのだろうか。それも良いだろうが、そうではない道もあるかもしれない。とにかく、意識的にせよ、無意識的にせよ、短い期間の間に爆速で強固に作り上げられてきた"Ado"というアーティストが、今後どのような歩みを進めるのか、目が離せない。

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6:Kan Sano「Natsume

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Kan Sanoの曲はいつも音の心地よさが異常なので、それだけで満足なのだが、この曲はイントロの音の中に、心地よさと違和感が、ぶつかり合っていて、いつにも増して耳を引かれた。こういうセンスが流石だ。

5:Porter Robinson「dullscythe」

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今回初めて知ったアーティスト。TLで話題になっていて知った。これは話題になるだけあるわと思った。この曲はインスト曲と言っていいだろう。全体としてはピアノの綺麗な音が中心となっている。が、あらゆる場面でバグが埋め込まれているかのように、一筋縄ではいかせてくれない。特に序盤は、切り刻まれた音が、微妙なバランスで繋ぎ合わされて鳴らされる。リズムも若干のずれがあって単純には乗れない。そこにはHyperpop的な空気感も感じる。さらに曲が進めば、クラブミュージック・ダンスミュージックに近い音も加わってきて、景色がガラッと変わる。終盤は綺麗なピアノの展開に戻ったかと思ったら、ハードのビートが加わってくる。一体この曲は何なんだろう。でも、全体を通せば、そういったバグのような一つひとつの要素も、"音"であり、綺麗な繋がりをもって、意図的に、かつ綿密に構築された楽曲だなという印象を持たせる。不思議な曲だ。

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4:STUTS & 松たか子 with 3exes「Presence I feat. KID FRESINO」

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この曲が、地上波でガッツリ流れるというその事実だけでも素晴らしいのに、曲自体の強度も凄まじい。この曲は、フックの松たか子に最も焦点を当てて作られたのだと思っているが、butajiの歌詞・メロディもSTUTSのトラックも、そこにバッチリ答えた松たか子のボーカルも、日本のポップスとはかくあるべしという矜持を感じるほどのクオリティだ。音楽ってこういうものだよね!って再確認させてくれる、文句なしの良さがある。そして、そこに最高のラップをぶつけてきたKID FRESINOも流石の一言。この曲が日本のヒップホップにおいて大きなマイルストーンとなることは、間違いないだろう。

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3:Kabanagu「いいだけ」

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こんなに力強い曲は、そうそうない。"いてくれればいいだけ"。轟音の中で、叫ばれ続けるこの言葉が、深く刺さりこんでくる。

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2:Mom「祝日」

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一体Momはどこまで行くのか。前作のモードを継続しつつも、そこまで行ったのか!という驚きがある。音を切り貼りして、絶妙にリズミカルに作り上げるその手腕には、もはや全幅の信頼すら置けるレベル。そこにシニカルな視点から、世界を切り取り、リリックとして乗せてくる。なんとなく分かるような、分からないような、こんな何とも言えない空気感を、"祝日"と表現してしまうのか。"クラスメイトみたいに話を逸らし続ける祝日"というラストラインには、唸った。

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1:君島大空「光暈(halo)」

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ガットギターとその歌声だけで、この豊かな世界を表現できるとは。彼の一つの特徴である多層的な、音と世界観の組み合わせで、表現されるカオスさとは、対極に置かれている世界。これが彼の軸として根付いているからこその、打ち込みやバンドでのあの楽曲たちが生まれるのだろう。彼の音・歌・言葉、そのどれもが、今最も光り輝いているアーティストだと思う。

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  • Albums/EPs


君島大空「袖の汀」

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どの曲も凄いの一言。逆に気軽にはちょっと聴けないぐらいの恐れ多さがある。

Kabanagu「泳ぐ真似」

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10分強7曲。とにかく力強い。過去楽曲のダンサブルなものも大好きだったが、こういう表現も素晴らしい。

(sic)boy,KM「social phobia」

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無敵コンビ。どんどんメインストリームの場で勝負して、度肝を抜いてほしい。"social phobia"の終盤の展開、最高。

YUKI「Terminal」

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衰えるどころか、新たな音を取り込んで、新しいYUKI像を更新していく。そのバイタリティとセンスに驚く。

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FIVE NEW OLD「MUSIC WARDROBE」

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大きな驚きはないものの、どんな場面にもフィットする音だし、ふとした時に聞きたくなる心地よさは、信頼している。

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Porter Robinson「Nurture」

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ジャケットの世界観と、音の世界観がバッチリ合ってるなと思う。"dullscythe"はこの楽曲の中でも異質な感じがしたが、他の楽曲もそれぞれの面白みがあって、今後注目していきたいアーティスト。

三浦大知「Backwards」

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この人もどこまで行くんだ。まだまだその勢いは衰えず、どんどん新しい世界観を切り開いていく。

lyrical school「Wonderland」

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ずっと聴いている。リリスクについては、以下に書き留めたので、そちらで。

shogomusic.hatenablog.com

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