選択の痕跡

音楽・テクノロジー・哲学

2020年に個人的に要注目のアーティストをまとめる

2020年が始まってからすでに2か月が経ってしまい、この2か月で社会の様相は一変してしまいました。まだこの先の見通しは見えない状況にあり、各方面で厳しい状況に直面する方も多くいるかと思いますが、自分は自分が出来ることを粛々とやっていこうということで、去年に引き続き、個人的に今年注目したいアーティスト10組について、簡単にまとめておきたいと思います。
基本的なルールとして、過去記事で紹介したアーティストは除くこととします。
自分で言うのも何ですが、全体ではメジャーにもマイナーにも寄り過ぎずに、ジャンルも横断的で、結構面白い塩梅の選出していると思うので、気になったアーティストが居ましたら、ぜひチェックを。

shogomusic.hatenablog.com

1:official髭男dism
2:木(KI)
3:Suspended 4th
4:Age Factory
5:NOT WONK
6:PAELLAS
7:sui sui duck
8:majiko
9:kolme
10:Native Rapper

shogomusic.hatenablog.com

1:Mrs. GREEN APPLE
2:ずっと真夜中でいいのに。
3:Orangeade
4:Kan Sano
5:black midi
6:lyrical school
7:桜エビ~ず
8:MON/KU
9:松木美定
10:浦上・想起


  • 君島大空

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music.apple.com

今最も自分が気になるアーティスト。この人を中心にシーンが動いているという面もあるのではと思い始めており、2020年は一気にブレイクする可能性を秘めている。
昨年、1st EP『午後の反射光』をリリースし、自分も含め、多くの人に知られることとなったが、その後の活動も目覚ましかった。フジロックのアクトは動画を観るだけでも素晴らしかったことは分かるし、崎山蒼志との"潜水"でのコラボ、超豪華バンドを率いてのワンマンライブと充実の1年間だっただろう。
kompass.cinra.net


そこで、少し長くなるが、3つの観点から、2020年最重要と考える君島大空について考えてみる。
一つめは、まずその音楽性について。
彼の目指すところは最早音楽とは言えないかのような「ギリギリ、音楽」とでもいうべき音楽だ、と自身でいうように、彼の音楽は一つひとつの音が繊細であり、その音が織りなす絶妙なバランスで成り立つ。これは彼の音楽を一聴すれば感じるところだろう。
それが出来るのは、関ジャムで蔦谷好位置が絶賛した、弾き語りで培われた確かなギターの技術と、一瞬で彼と分かる中性的で特徴的な歌が、曲の大きな幹を担っているからだろう。 音楽の多様性は爆発的に広がる中でも彼の音楽は個性的であり、スペシャルな存在だと個人的に思う。 www.cinra.net
そして二つ目は、音楽の関わり方の幅の広さだ。
彼は、弾き語りでのライブがこれまで中心だったが、2019年からはバンドでもライブを行っている。
弾き語りも、バンド形式のライブも観たことがあるが、弾き語りはギターと歌とシンプルな構成を活かした自由な音楽が非常に感動したし、バンド形式は他の楽器も活かしたアンサンブルで、その緩急とグルーヴにやられた。 さらに、プロデュースやサポートなどの裏方としても、多数活躍している。
自分が知っているだけでも上述の通り、崎山蒼志の"潜水"では、君島大空らしさ満載でアレンジをしてみせたし、シンガーソングライターKuroや川﨑レオン、高井息吹の曲をプロデュースしたり、マスロックアイドルsora tob sakanaへの楽曲提供等々と、話題に事を欠かない。
元々キャリアはサポートの活動から始まったようで、上述の高井息吹のサポートも担っているし、とにかくその活動の幅は非常に広い。
自身の音楽を強く打ち出すこともできるし、他人の曲を裏から支えることもできる。自分の"らしさ"をうまく調整しながら、多様に活躍するその様は、最近のシーンの中でも珍しい存在ではないかと思っている。
realsound.jp
そして三つ目は、君島大空を取り巻く人々だ。
多様な活動の中で関わる人々も様々だが、現在目下大活躍中のアーティストから、今後確実にシーンを担っていくアーティストなど、今のシーンの中のキーマンとの繋がりが多いと感じている。
例えば、彼のバンドのメンバーは、くるりやKID FRESINOのサポート、CRCK/LCKSでの活動で知られる今最も忙しいドラマーであろう石若駿(Dr)、今最も勢いのあるロックバンドKing Gnuのリズム隊を務める新井和輝(Ba)、中村佳穂BANDなどで幅広く活躍中の西田修大(Gt)という、あまりにも豪華な面々だ。
また、2019年に自然発生的に起こった「遠視のコントラルト」のカバーでは、長谷川白紙や浦上想起といったような、次世代のシンガーソングライターとの強い繋がりも感じさせた。
harvest.tokyo
ここまで色々書いてきたが、君島大空はまだ彼自身の音源としてはEP1枚とシングル1枚ほどしか発表していない。まだまだ底の知れない彼だが、おそらく初のフルアルバムは、シーンに大きな影響を及ぼす1枚になることは間違いない。
いつになるかは分からないが、今からその発表が心から待ち遠しく、出来れば2020年にその音源を耳にできることを楽しみにしている。

qetic.jp

  • Mom

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現役大学生のシンガーソングライター/トラックメイカーとして、"ローファイ"や"クラフトヒップホップ"というキーワードで活躍してきたMomだが、2019年末にリリースした「マスク」と「ハッピーニュースペーパー」で、完全にネクストレベルに到達した。
今までの"ローファイ"や"クラフトヒップホップ"ではちょっとした幼さというのも感じられ、それが良いアクセントになっていた。
しかし、その裏で漂っていた強いメッセージ性が、上述の2曲では前面に押し出され始めている。ややシニカルな面が強すぎると思いつつも、この閉塞感ある社会にはちょうどいいかもとすら感じる。
現代の若者からのリスナー、社会への投げかけというようにも思え、制作中というアルバムは非常に射程距離が広く長いものになるだろう。

www.cinra.net

  • Gezan

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この不確実な時代において、なぜ多くのバンドは従来の型にハマって、そこから抜け出せないのか。
Gezanを観ているとそう考えさせられるほど、他のバンドとは異質の強いエネルギーを放つ。
彼らは、社会を大きく変える力を持ちつつある。
GEZANの自主レーベル「十三月」が主催する『全感覚祭』は、投げ銭制のフェスだが、2019年の中止からのサーキットイベントへ変更しての開催というような規格外の取り組みとそのバイタリティーには驚きしかないし、先日リリースされた「狂(KLUE)」も、まさに2020年のレベルミュージックであった。
まだまだその存在はインディーの枠の中だと思うが、これからさらに多くの人に知られることになるだろう。
その時に、社会は一体どのようにGezanという"生き物"を消化するのだろうか。

prtimes.jp

mikiki.tokyo.jp

  • Lucky Kilimanjaro

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日々を生きるのに精一杯な人もたくさんいると思うが、そういう大変な時にこそ聴きたい音楽というのもある。
Lucky Kilimanjaroの音楽は、まさにそれだ。日々の生活に、極力接近したダンスミュージック。
一つひとつのセンテンスも、"わかるわー"という位、絶妙な切り口から歌われる。
とにかく、"生活"にこだわっているからこそのこの感覚が、こちらまで伝わってくるのだろう。
じわじわと広まって、気づいたらいつの間にか、みんな知ってるみたいなことになるかもしれない。
疲れたら、Lucky Kilimanjaroを聴いて、自由気ままにに踊ろう。

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  • 諭吉/佳作men

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崎山蒼志とも交流が深い女性シンガーソングライターで、新世代アーティストのひとり、その存在が注目されたのは、一気に注目を集めたのは15歳で参加した“未確認フェスティバル2018”。
良い意味で若さを感じさせないその音楽で、ファイナリスト最年少にして、審査員特別賞を受賞、そしてその後、でんぱ組への楽曲提供や、執筆活動もするなど、まさしくアーティストとして幅広く活躍している。
歌詞やブログを見ても、その文才というか表現力の高さは一級品のように思える。
まだまだ、世に出ている作品は多くはないが、そのうち発表されるだろうアルバムで、彼女のことがより深く表現されるだろう。

kompass.cinra.net

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DEAN FUJIOKAとは何者か。そのマルチな活躍ぶりが星野源と重なるが、一体何者かが未だに良く分かっていない。
まさしくの内容を書いている記事があったが、そこから伝わるのは、音楽に本気で取り組んでいる、そして心底音楽に惚れているアーティストということだった。
結局何者かはイマイチまだ良く分からないのだが、たぶん正直どうでもいい。
自分が主役の月9ドラマをやって、そこでJPOPとは一線を画した世界標準の音を流してしまう位、半端じゃない人。
英語や中国語もシームレスに使いこなしながら、言葉の壁を軽々超えてくるし、口だけの"グローバル"が蔓延る中で、グローバルとはこういうものだと見せつけられている気がする。 彼が音楽以外でも活躍すれば活躍するほど、彼の音楽も多くの耳に届く。そうすると、色んなものが少し良い方向に行くような気がする。そうやって、その高いクオリティの音楽が世間に知られる日も、そう遠くないだろう。

news.livedoor.com

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今の小袋成彬はとても楽しそうだ。
昨年頭にイギリスに移住してから、ネガティブな感情が一気にポジティブに振れているように見える。そうして昨年末にリリースされたアルバム「Piercing」は本当に素晴らしかった。 一時期の社会への絶望の感情を超えて、今は非常にポジティブに音楽に取り組んでいることが良く分かった。 miyearnzzlabo.com
また、各種プロデュースもこなしているが、どれもこれも素晴らしいものばかり。特に「Summertime」は2019年の個人的なベストトラックだ。
www.cinra.net
直近では、TokyoRecordingsの新しいスタッフを募集するなど、2020年も勢いは止まらなそうだ。イギリスから日本に新しい風を吹き込みつづけてほしい。
「今は、希望を持って未来を見つめられる」だなんて、2018年末の彼からは想像もできなかった言葉じゃないか。今の音楽シーンをかき回してくれ。

i-d.vice.com

  • 藤井風

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読みは、「ふじい かぜ」。SpotifyのEarly Noise2020で知ったアーティストだ。
曲のタイトルがふざけていて、はじめは若干ネガティブな印象を受けたのだが、曲を聴いてびっくり。 曲名との音楽そのもののギャップが激しすぎて、最初はついていけなかったが、とにかく笑ってしまうぐらい、良い曲だった。
グルーヴ感満載のブラックミュージックに、歌も上手くて良い。その音の本格さとは裏腹に、曲名のタイトルからも分かる通り、歌詞も非常に身近な言葉遣いで、親近感が湧く。
カバー曲でネットでは人気を集めていたようだが、オリジナルでどんどん勝負してほしい。
まだ2曲しかないが、これからが楽しみなアーティストだ。

prtimes.jp

  • Vaundy

www.youtube.com

藤井風同様、SpotifyのEarly Noise2020で知ったアーティストだ。あまり情報が見当たらないのだが、音楽塾ヴォイス出身のシンガーソングライターとのこと。
藤井風と似たような音楽の印象も最初受けたのだが、既発の3曲を聴く限り、ブラックミュージックの枠にハマらずに、その歌唱力を軸に、多様な音楽を作り出して、ポップシーンに殴り込んできそうだ。
こちらも今後の活躍が非常に楽しみ。

  • 女王蜂

www.youtube.com

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彼らが一体何者なのか、どういうバンドなのか、未だに良く分からない。最新のアー写もなかなかに刺激的だ。
初めて聴いたのは、もう5年ぐらい前だと思う。
当時は、面白いバンドもいるものだなぁというぐらいだったが、今は全然違う。
邦楽をぶち壊して、再構築するかの如く、新しい音を鳴らし続ける、最高に刺激的なバンドだ。ジャンルは関係なし、まさに「女王蜂」というジャンルの曲を鳴らし続けている。
新アルバムはサブスクも解禁した。合わせて去年のアルバムもサブスクに解禁されたが、どちらの作品も他の邦楽とは比べ物にならないぐらい自由で、衝撃だった。
彼らとしては地道に活動しているだけかもしれないが、とんでもないバンドが成長しつつあったようだ。

www.diskgarage.com


以上、10組のアーティストを紹介しました。
過去の選出アーティストを縛ったのでこの選出ですが、もちろん、ずとまよは今年跳ねると思うし、MON/KU・松木美定・浦上想起は、キングダムの蒙驁将軍の言葉が如く、この3アーティストでどんどん高みに登っていくだろうし、楽しみは尽きません。
でもいつも書くように、最も期待しているのは、自分の想像をひっくり返すような音楽が生まれること、そういう動きがシーンに生まれることです。
今年もたくさん良い音楽が聴けることを期待しています。