選択の痕跡

音楽・テクノロジー・哲学

2019.5 Monthly Music Log

2019年5月の音楽系ニュースや出来事等から、考えたことを残しておきます。 

 

rollingstonejapan.com

個人的には、サマソニと日付被りしていており、そのラインナップが気になっていたウッドストック50周年フェスだが、色々あって中止となったようである。

記事にある通り、同フェスティバルの主催者マイケル・ラングはまだ開催する気満々のように見え、その真相はまだよくわからないが、ここで書いておきたいのは、昨今、毎週のように音楽フェスティバルが行われているが、その一つ一つにもこういったビジネスの泥臭い話も付きまとい得るということだ。

なかなか参加側からこういった話は目に見えないし、必ずしも見えるべきとも思わないが、今回のような厳しい話を知っておくことで、音楽フェスティバルにどれだけ多くの人が関わっているかを再確認することができるし、音楽フェスティバルに関する考え方や、参加したときの感じ方も少し変わって、視野が広がるかもしれない。

 

harvest.tokyo

以下の記事にも少し書いたが、CROSSING CARNIVAL'19にて、崎山蒼志と君島大空のパフォーマンスは圧倒的だった。
その中で演奏された君島大空の「遠視のコントラルト」。

この曲を、様々なSSWがカバーし、Twitterで公開する現象が起きた。
どのカバーも、各アーティストの味がしっかり出ていて面白いが、やはりこういったカバーを聴くと、原曲の素晴らしさを改めて感じる。

最近のSSW界隈の音楽の面白さは、本当に目が離せない状況であり、その中心は君島大空なのではというのが、今回の現象からもよくわかる。
是非、他にももっと面白いことを期待したいし、これからも要注目である。
もしも、こういったラインナップでフェスが行われたら、めちゃくちゃ面白いイベントになること間違いないだろう。

shogomusic.hatenablog.com

 

  • 続:エドシーラン、どこでそんなに聴かれているの?問題

face.hateblo.jp

先月書いた、「エドシーラン、どこでそんなに聴かれているの?問題」について、主にチャート分析の記事を書かれている face_urbansoul さんが、”エド・シーラン「Shape Of You」はどこでそんなに聴かれているのか問題”に対する自分なりの回答 - face itとして、しっかりとした分析記事を書いていただけた。。。非常にありがたい。。。
この内容を受けて、再度考えたことを大きく2つ記載しておく。

 

 1.プレイリストの影響について

上記記事では以下の内容で言及されている。

② ストリーミングのプレイリストに多数引用されている 

確かに、現代においてプレイリストの役割は大きくなっており、感覚的にはストリーミングではプレイリストベースで音楽を聴く人がかなり増えているのではないか。
その状況の中で、"どれだけ多くのプレイリストに起用されるか"というのが、再生回数に大きく影響することは、想像に難くない。
再生数とプレイリストへの起用数の関連性を調べてみることも面白いかもしれない。

ところで、日本のストリーミングのチャートで上位になっている曲は、今回の「Shape Of You」も含め、ロングヒットとなっている曲が多い。
これを踏まえると、"人気があるからプレイリストに多く入る"のか、"プレイリストに多く入っているから人気があるのか"のどちらなのか、という疑問が残る。

そもそも音楽は、よほどのものでなければ、聴き続ければそれなりに愛着が湧くものだと思う。
1968年にアメリカの心理学者ロバート・ザイオンスが広めた、同じ人や物に接する回数が増えるほど、その対象に対して好印象を持つようになる効果"ザイオンス効果"によるものだろう。

良い曲であることはもちろん必須条件だが、その上でいかにプレイリストに起用されるかの重要性を改めて感じる内容である。
今後この流れはますます広まっていくだろう。
その中では、"プレイリスター"という役割の重要性も併せて見逃せない。

www.tv-tokyo.co.jp

 

 2.日本においてどのようにヒットを起こしていくか

上記記事の最後に指摘されている、以下の内容は非常に重要だと思う。
長いが引用させていただく。

「Shape Of You」の勢いを阻止したいと考えるならば、必要なのは「Shape Of You」を上回る大ヒット/ロングヒット作品を生んで「Shape Of You」をチャートから押し出すこと、「Shape Of You」への興味を減らしていくことではないでしょうか。極めて難しいことは承知ですが、そのためにはストリーミングと動画再生という2つをきちんと解禁(後者においてはフル尺で掲載)し、「Shape Of You」と同じスタートラインに立つことが大前提となることは間違いありません。 

この内容はまさしくその通りであり、これ以上言及する必要もないと思うが、ここに関連して自分が思うのは、"日本の音楽業界は、もはやユーザの姿がさっぱり見えなくなってしまっているのではないか?"ということだ。

これまでは、マスメディアのおかげで良くも悪くも、流行りの音楽が分かりやすく可視化されていたように思う。
しかし、ニーズが多様化し、音楽の聴かれ方も多様になってきた状況において、なんだかよくわからない音楽の魅せ方も目立つようになってきたのではないか。
話題に多く上がるのが、"ショートMV"に関する議論だろう。
最近だと、CM起用もされ、レビュー記事も書かれ、話題性抜群だった、小袋成彬プロデュースでRIRIとKEIJUの「Summertime」が、配信開始時にはティーザー動画しか公開されずに、しかも未だにちゃんとしたフルでMVも公開されていない状況が、自分は非常に納得がいっていない。
この夏のアンセムとなる可能性を秘めた1曲であり、まだこれからでもあるが、素晴らしいポテンシャルを持った曲を、うまくリスナーに届けられていないのでは、という感覚が強いのである。

日本では、カラオケ文化が根付いているし、TVのチカラはまだあるし、CDもまだまだ買われる。
それだけ多様にリスナーとの接点があるということだ。
それをチャンスと捉え、しっかりとリスナーの一人ひとりの顔をイメージしながら、どのように音楽を届けていくのか。
これを徹底的に考えることが出来れば、きっと面白い音楽シーンになるはずだ。
ぜひ、思考停止せずに、失敗を恐れずに、チャレンジをしていく業界になることを期待したい。

 

  • VIVA LA ROCK 2019に行って考えたこと

毎年参加しているビバラロック。
今年は、ステージ構成が大きく変わってびっくりした。
この記事でも少し書いたが、この変更は大当たりだったように思う。
全体的に見れば、多少アクト数は減ったものの、スターステージとビバステージというキャパシティが大きい2つのステージのアクトを、一つの空間で全て体験できるというのは、かなり大きい魅力となった。
転換の待ち時間もほとんどなく、これまででも最高の環境だったのが、さらに居心地がよくなり、フェス初心者に確実にお勧めできるフェスとなった。
ウッドストックフェスのような話もある中で、時期的な問題もあり、集客等々、苦労している部分も多くあることには間違いないと思うが、来年以降もぜひ参加し続けたい、そんな素晴らしいフェスだった。