選択の痕跡

音楽・テクノロジー・哲学

2019.1 Monthly Books

基本は音楽メインのブログですが、最近は良く読書もするようになったので、

毎月読んだ本の中で、いくつかを紹介していきたいと思います。

気になったものは是非詳細調べていただいたり、手に取ったりしていただければ。

 

  • 読書する人だけがたどり着ける場所 / 齋藤 孝

元々自分は全く本を読む習慣がなかった。

学生の時の読書感想文は、毎年同じ本を使いまわしていたほどだ。

活字が嫌いだとかいったような明確な理由があったわけでもなく、ただなんとなく本を読む気になれなかっただけだと思う。

 

そんな自分が、最近は良く本を読むようになった。

これも特別なきっかけがあったわけではないが、良い年齢になってきたこともあり、本を読む習慣を身に着けよう

と、ふと思っただけである。

 

この本は、自分のような、

「なぜ本を読むのか?」

といった問いに明確な回答を持っていない人には、ぴったりの本だ。

 

インターネットが普及した現代で、あえて本を読む理由を、著者らしい平易で読みやすい文体で、様々な角度から説明しているが、

なによりも、著者が如何に本が好きかという情熱を、全体を通じて感じることができる。

 

 

  • センスメイキング / クリスチャン・マスビアウ,斎藤栄一郎
センスメイキング

センスメイキング

 

ビジネスの話になると、主観的な要素は軽視され、データや科学などの客観的な事実を求められる。

普段仕事をしていても、過剰な根拠や理由を求められるという感覚を持っているのは、自分だけではないのではないか。

 

ビッグデータ全盛の現代では、教育において、STEM、つまり科学・技術・工学・数学を重視すべきといったような流れもあり、こういった自然科学的な理系の知識の重要度はますます増しているように見える。

しかし、そこに対して、ちょっと違うんじゃない?という指摘をしているのが本書である。

 

人々の生活は複雑であり、ロジックやデータで簡単に解き明かせるものではないはずである。

そこに対してのアプローチとして、「センスメイキング」という人文科学に根ざした実践的な知の技法が紹介されており、事例も豊富で分かりやすく、とても興味深かった。

 

最近はこういったこれまでの自然科学重視の考え方に対して、人間らしい考え方をもっと取り入れるべきといったようなニュアンスの話が多いように、個人的には感じている。

以下の本もその一部だが、デザイン思考が流行る中で、面白いアプローチだと思う。

 

どちらが正解というような話ではない。

もっと柔軟に、多様な視点で考えを深めていくことが重要だろう。

なぜ、世界のエリートはどんなに忙しくても美術館に行くのか?
 

 

 

  • 残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか / 中原淳
残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか? (光文社新書)

残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか? (光文社新書)

 

仕事が好きな人はいるだろうが、残業が好きな人は、多くはないだろう。

自分自身も含めて、ミレニアル世代以降は、特にその傾向が強いように、肌感覚でも感じている。

 

そんな残業について、非常に丁寧に論じているのが本書である。

残業というワードが出ると、

「残業は減らすべきだ」「残業が多いやつは無能だ」「残業したほうが成長できる」

といったような短絡的な話になりがちだが、

そういった固定観念を抜きにして、残業や長時間労働の仕組みを論じているのが、

とても好印象だった。

 

自分自身結構残業が多いのだが、納得できる部分もたくさんあり、本書の最後にあるように、今までの考え方から変えていく必要があると感じた。

 

名ばかりの働き方改革に振り回されている人や、自分のように残業が多い人は、一度読んでみる価値のある本である。

 

  •  13・67/ 陳 浩基
13・67

13・67

 

最後は小説。

何か面白いミステリ小説が読みたいな、と思っていたところにこの記事で知った本である。

booklog.jp

 

香港が舞台の本書は、6編の連作中編が、時系列を遡っていく形式となっており、それぞれの作品が警察官を軸に、重厚なストーリーを繰り広げている。

一つ一つの謎の深さには驚きの連続だが、それだけではなく、随所に香港の空気感も感じられるのが大きな特徴だろう。

 

個人的には、え、もう謎解き始まるの、まだ情報集まってなくない!?というような驚きが多かったが、もちろん突拍子もないような話は全くなく、ただただ著者の仕掛けに感服するばかりだった。

最後には、予想だにしていない展開も待ち受けており、500ページを超える大作ではあるが、最初から最後まで楽しめる作品だった。