選択の痕跡

音楽・テクノロジー・哲学

2020.5 Monthly Best Songs

2020年5月にリリースされた曲・アルバム/EPから特に良かった10曲を選びました。
宇多田ヒカル、、、ってなりました。あと自分の好みの音楽性が結構分かりやすく出た気がしました。

  • Songs


10:New Biboujin「Bapt」

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2014年結成のドラムレスポストロック3人バンドであるNew Biboujinによる、3か月連続リリースの最終楽曲となったのがこの曲。
一聴して、今らしい音だということが分かるが、曲の作り方も今っぽく、自らの活動を「DIY・ベットルーム・プロジェクト」と名乗り、メンバーが遠隔で楽曲制作を行っている。
3か月連続リリースは全て良かったのだが、この最終楽曲は、展開が特に面白い。序盤のミニマルな日本語詞メインのパートから、後半は一転。この緩急ある変化から、とてつもないカタルシスを感じる。

remarkable point:2:50からのKanye Westの「ye」にインスパイアされたという劇的なビートチェンジ。

mikiki.tokyo.jp

sensa.jp

9:Sano ibuki「Jewelry

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SSW、Sano ibukiによる2年ぶりの作品となるEP「SYMBOL」より。
彼の楽曲は、比較的ストレートなロックチューンが合わせられることが多かった印象だが、この曲は、少し趣が違う。
Jewelry」というタイトルにふさわしいキラキラとした、ギターで奏でられるリフを中心に、様々な音たちが代わる代わるに現れては消える。ビートは、打ち込みだろうか、ミニマル気味で、全体的に締まった音を作りだしている。
ボーカルは文句ないので、こういう面白いトラックとばっちり合わさると、強い。

remarkable point:0:45や2:00からのBメロでの強いベース。曲全体のミニマルな印象を決定づけている。

8:okkaaa,LULU「awake / asleep」

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最近目にすることの多い新世代アーティストokkaaaによる初コンセプトシングルの表題曲。
ジャンルで括るのならば、オルタナティブR&Bや、チルアウト・ミュージック、ローファイ・ヒップホップという言葉になると思うのだが、それだけでは回収できないものを感じるアーティストだ。
この曲は、日本と中国をルーツに持つ新世代プロデューサー・LULUとの共作曲になっており、後半には、LULUによる中国語ラップも繰り広げられる。
そして、新型コロナウィルスの状況を受けて制作された楽曲ということもあってか、一つひとつのリリックの鋭さには驚かされる。
okkaaaのnoteを読むと、彼のアーティストとして深みが良く分かる。これからどんなアーティストになっていくのか楽しみだ。

remarkable point:全体的に溢れる諦念のムードの中にあっても、ちゃんと前を向いている態度。

混濁した夢でも
視界が歪んでいても
僕らは物語を紡いでいくのさ

note.com

7:Vaundy「napori」

5月27日に発売された2020年注目の若手SSW、Vaundyによる初アルバム「strobo」より。
彼は非常に器用なので、アルバムの中でも様々な音が奏でられているのだが、この曲が一番好きだ。
ビート中心で音数少なく構成されたトラックに、Vaundyの伸びやかなボーカルが自由に、メロウに、踊る感じがして、とても心地が良い。これぐらいシンプルでも十分個性が出るアーティストだと思う。
終盤に挿入される日常の音も、曲のムードに合っていて、面白い。

remarkable point:2:13からの、日常の音とちょっとチープなピアノの音の絡みあいが挿入された後に、一瞬の無音で転換されて、楽曲に戻る展開。

6:藤井 風「さよならべいべ」

こちらも2020年の要注目SSWが、5/20にリリースしたファーストアルバム「HELP EVER HURT NEVER」から。締めくくりの1曲。
『何なんw』の衝撃から、彼には注目していたが、期待に違わず素晴らしい出来。一気に知名度も上がっている印象だ。
この曲は、曲名からして、ちょっと古臭い感じで、タイトルの付け方にらしさを感じるのだが、曲自体も、歌詞の細かな言葉遣いや、なんとなく懐かしいサビのメロディがグッとくる。めちゃくちゃ印象に残るというわけではないのだが、全体の構成を踏まえてのBメロからサビへの持っていき方がスムーズで、とてもしっくり来るメロディに仕上げられているように感じる。
この諸々の選び方一つひとつにセンスを感じさせるところが、なんとも恐ろしい。
知らなかったが、オールナイトニッポンのパーソナリティーもやっているとのことで、これからの活躍がますます期待される。

remarkable point:3:40からの最後の最後で、いきなり派手なギターソロがメインをかっさらうところ。音自体もちょっと過剰で、下手をするとダサい感じになるのだが、思い切りの良さがそれを感じさせない。

www.fanthology.me

5:S亜TOH「ガバじゃなきゃ」

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“パワー系ネオ・ハイパー・ポップ・デュオ"を自称するS亜TOHが5/31にリリースした1st EP『homo』より。
これまでも名前は何度か見ていたが、この曲はとてつもないパワーのショートチューンだなと思う。"ガバ"は、ハードコアテクノの一種としての音楽のジャンルのことかと思うが、まさしく序盤から、ハードなエレクトロが繰り広げられる。
過剰なまでのトラックだけでもカッコ良いが、一つひとつのリリックも見逃せない。ここにもTohjiが出てくるのも興味深い。

remarkable point:0:25のフックを支える、凶暴なまでの低音。カッコ良い。

4:KID FRESINO「Cats & Dogs (feat. カネコアヤノ)」

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カネコアヤノを迎えた久しぶりのKID FRESINOの新曲。
なんというか、こういう音楽いいよねって思う。本当に優しい。もちろん、2人の個性が存分に表現されている曲でもある。全く違う作風の2人が共作すると、こういう風になるのかという驚きもある。決してぶつかり合っているわけではない。でも、混じり合っているわけでもない。この絶妙な距離感が素晴らしい。流石の熟練のバンド隊が作り出す音から生み出される雰囲気の担っている役割も大きいだろう。

remarkable point:全編通して、二人の稀有な歌を地味ながら、強固に支えるバンド隊。

realsound.jp

3:Omoinotake「One Day」

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3人組ピアノポップトリオによる、3か月連続リリースの第二弾。
このバンドのキャッチーな音を作りだすセンスにも、毎回驚かされる。
この曲に関しては、AメロBメロは結構凝った面白い展開を見せるが、フックはめちゃくちゃストレートなメロディをぶつけている。
個人的にはフックでももう一工夫あると、もっと好みだったのだが、このストレートなフックで勝負できる強さが今の彼らにはあるのだと思う。

remarkable point:0:57などのBメロでの大胆な転調。こういう転調はOfficial髭男dismらしさも感じるが、違和感ギリギリの展開を突っ込むあたり、なかなかのやり手である。

2:THE NOVEMBERS「Hamletmachine」

THE NOVEMBERS、8枚目のアルバム「At The Beginning」より。
イントロから、飛ばしまくりの凶暴なサウンドが良い。それでいて、フックでは一気に開けた音で、風景をガラッと変えてしまう。こういうところが、個人的に彼らの曲の好きなところだ。
今作は全体的にそうだが、凶暴な音の中にも立体感が感じられる気がして、面白みが増していると思う。その上で、一つひとつの音の強靭さがあるからこそ、何度もリピートできるほどの楽曲の中毒性に繋がっているのだろう。

remarkable point:イントロから炸裂する狂暴なメインフレーズ。ギターとベースだろうか。シンプルながら力強い。 belongmedia.net

1:宇多田ヒカル「誰にも言わない」

誰にも言わない

誰にも言わない

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宇多田ヒカルの配信限定シングル。「Time」も素晴らしかったが、こちらにした。
何も言うことはない。日本のトップアーティストが、これだけのクオリティの楽曲を生み出し続けているということ、それだけで途轍もなく凄いことであり、喜ばしく、嬉しいことだと思う。
小袋成彬の影響を感じる音作りも、上品なサックスも、突然現れるハッとするような電子音も、「明日から逃げるより 今に囚われたい」とか「まわり道には色気がないじゃん」とか「感じたくないことも感じなきゃ 何も感じられなくなるから」とか言ってしまうその感性も、そのどれもが最上級の輝きを放っている。

remarkable point:全てだが、強いて言うならば、0:37ぐらいから鳴り出すビートの始まりのキックドラムを、そこから入れるのかという衝撃。そのセンスに鳥肌が立つ。

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  • Albums/EPs


長谷川白紙「夢の骨が襲いかかる!」

長谷川白紙のニューアルバムは、弾き語りカバー集。彼はここまで歌えるのか!と驚いてしまった。

藤井 風「HELP EVER HURT NEVER」

1997年生まれで完全に平成世代なはずなのに、どことなく昭和感を感じさせるセンスが、本当に面白い。

Vaundy「strobo」

Vaundyの器用さが詰まったファーストアルバム。

THE NOVEMBERS「At The Beginning」

確かに音が大きく変わった感じるアルバムだった。まだまだこの先が楽しみなバンドだ。